2020/11/22

【柳瀬博一】新しいムーブメントは全部「16号線」で始まった

NewsPicks 公式
NewsPicks, Inc. 公式アカウント
神奈川県三浦半島の端から千葉県房総半島の端まで、東京湾をぐるりと囲む「国道16号線」

「郊外」のイメージが強いこの道沿いのエリアこそ、日本の政治・経済・カルチャーのすべてにおいて、時代をリードしてきた──と語る、東京工業大学リベラルアーツ研究員教授の柳瀬博一氏『国道16号線/新潮社』)。

インタビュー後編では、戦後の16号線で花開いたビジネスの全貌に迫る。

16号線発祥のロードサイドビジネス

──前回、首都圏に暮らす人々は「鉄道ネットワーク」の上で移動しているけど、実際は「自動車ネットワーク」によってライフラインを支えられている、というお話がありました。そのことを、普段私たちがあまり意識していないのは、考えてみれば奇妙なことですね。
柳瀬 首都圏では、大半の人が「通勤手段」としての「鉄道ネットワーク」の上で生活しています。そのため、都市での生活に欠かせない小売や宅配便、通販などのサービスが、自動車と道路のネットワークで支えられていることをついつい忘れてしまう。
都市部で自家用車は必要ないかもしれません。しかし、物流を担う自動車が存在しなければ、生活は成り立たない。
新型コロナウイルスの感染拡大の過程で自宅にいる機会が増えたことで、宅配便や通販のように「自動車ネットワーク」で生活が支えられていることが、改めてはっきり認識できた側面があります。
16号線のような郊外や地方都市に目を向けると、コロナ禍で外出自粛などもあって都市部の小売業態の多くが売り上げを落としている中、自動車で来店できる郊外型小売業が数字を伸ばしました
その筆頭が、アウトドアウェアのワークマンやホームセンターのカインズなどを束ねるベイシアグループ(群馬県前橋市)です。郊外型店舗を多数展開する同グループは、2019年11月〜2020年10月の売り上げが創業61年目にして初めて1兆円を突破しました。16号線エリアにも多くの店舗があります。
コロナ下で存在感を放ったワークマン(松尾/アフロ)