2020/11/20

【新】郊外ブーム再来。「国道16号線」回帰現象を読み解く

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まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一氏だ。
編集者時代に数々のベストセラーを手がけ、博覧強記の人としても知られる柳瀬氏が、新著『国道16号線 ー「日本」を創った道ー』(新潮社)でフィーチャーするのは、神奈川県三浦半島の端から千葉県房総半島の端まで、東京湾をぐるりと囲む「国道16号線」だ。
16号線沿いに並ぶ街は、横須賀、横浜、町田、八王子、川越、柏、木更津など。該当エリア(以下「16号線エリア」)には1100万人が住み、全国一混雑する道でもある。
しかし、われわれは意外なほどこの道のことを知らない。「少子高齢化でさびれゆく郊外」「ヤンキーと暴走族の街」──そんなネガティブイメージで語る人も少なくない。
しかし、旧石器時代から人が住み、源頼朝が挙兵し、徳川家康を呼び寄せ、近代に入れば絹と軍艦で経済を支えた16号線エリアこそが「日本」を創ったのだと柳瀬氏は言う。
そして、コロナで都心を頂点とするヒエラルキーが崩れた今、多くの人がこのエリアに回帰していくのは「必然」なのだと。
このエリアのパワーの源とは何か。そして、今ここで何が起きているのか、刺激的な「国道16号線論」をお届けしよう。
柳瀬博一(やなせ・ひろいち)
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授(メディア論)。1964年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社、「日経ビジネス」記者を経て単行本編集に従事。『小倉昌男 経営学』『流行人類学クロニクル』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』などを担当。「日経ビジネス オンライン」立ち上げに参画、広告プロデューサーを務める。TBSラジオ、ラジオNIKKEIでラジオパーソナリティとしても活動。2018年3月日経BP社退社後、現職。

「都心がエライ」という幻想

──「日本」は国道16号線を起点に発展してきたという論考はとても刺激的です。「都心>郊外」という思い込みがひっくり返されますね。
柳瀬 そもそも「東京は江戸を中心に発展し、郊外へと広がっていった」という前提が間違っているのです。