[17日 ロイター] - 著名投資家ウィリアム・アックマン氏の特別買収目的会社(SPAC)「パーシング・スクエア・トンチン・ホールディングス」<PSTH.N>に大手の機関投資家が投資している。

SPACは上場時点で買収先が決まっていないことから、「ブランクチェック(白地小切手)会社」と呼ばれる。アックマン氏はSPACとしては過去最大規模の買収を目指している。

ここ数日で公表された規制当局への提出書類によると、トンチンに投資している大手投資家には、資産運用会社のティー・ロウ・プライス・グループ<TROW.O>、グッゲンハイム・パートナーズ、ヘッジファンドのバウポスト・グループ、カナダ・オンタリオ州教職員年金基金、プライベートエクイティ(PE)のブラックストーン・グループ<BX.N>などが含まれる。

トンチンは7月の新規株式公開(IPO)で40億ドルを調達。史上最大のSAPCとなった。IPOで調達した資金に加え、新たに調達できる資本と債務を活用して、評価額100億ドル規模の企業の少数株式を取得する計画だ。

具体的にどのような企業や業種に投資するかは明らかにしていないが、関係筋によると、アックマン氏は、同族会社や、大規模な事業部門のスピンオフ(分離・独立)を検討している上場企業、「成熟したユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)」への投資を視野に入れている。

アックマン氏が、SPACの資金力を上回る投資を望む場合は、投資家から追加の資本を調達することが可能。アックマン氏が運用するヘッジファンドも10億ー30億ドルの投資を確約している。

トンチンのIPOには、投資家の応募が殺到。関係筋によると、アックマン氏は好きな投資家を選べる立場にある。

アックマン氏のスポークスマンはコメントを控えている。

<アックマン氏の投資手腕に期待>

SPACリサーチによると、SPACによる今年の資金調達額は現時点で657億ドルと、これまでの年間最高調達額だった136億ドルを上回っている。こうしたSPACの中でも、特に目を引く存在がトンチンだ。

これまで多くの機関投資家は、リスクが高すぎるとしてSPACを敬遠してきた。だが、トンチンには複数の大手機関投資家が投資。アックマン氏の投資手腕が信頼されていることが浮き彫りとなった。

規制当局への提出書類によると、グッゲンハイム・パートナーズはトンチン株2200万株(5億0700万ドル相当)を保有。バウポストは1750万株(4億ドル相当)を保有している。

オンタリオ州教職員年金基金も2億5700万ドル相当、ティー・ロウ・プライスも1億7400万ドル相当を保有している。

その他、ヘッジファンドのソロバン・キャピタル、ミレニアム・マネジメント、ファー・ツリー・キャピタル・マネジメント、シタデル・アドバイザーズ、メイソン・キャピタル・マネジメント、ムーア・キャピタル・マネジメントなども、トンチンに投資している。

関係筋によると、投資家の大半は北米の企業だが、アジア、中東、欧州の政府系ファンドもトンチンに投資しているという。

トンチンは、アックマン氏が初めて設立したSPACではない。同氏は2011年に他社と共同でSPAC「ジャスティス・ホールディングス」を設立。

ジャスティスは15億ドルを調達し、1年後にハンバーガー店経営のバーガーキング・ワールドワイドと合併。現在の社名は「レストラン・ブランズ・インターナショナル」で、アックマン氏の最大の投資先の1つとなっている。

(Svea Herbst-Bayliss記者)