2020/11/17

【パーソルキャリア大浦×ラッシュ安田】新時代の「脱・働かされキャリア」を考える

海達 亮弥
NewsPicks, inc. BRAND DESIGN SENIOR EDITOR
 コロナ・ショック以降、私たちの働き方は急速に変化している。従来の人事制度では変化に対応できないことを受け、「ジョブ型雇用」へのシフトに乗り出す大企業も増えはじめた。
 日本型雇用を前提としたキャリア観が通用しなくなるとしたら、今後はどんな基準で「仕事」を選び、自分のキャリアを構築していくべきなのか。
 その答えを探るべく、オンラインイベントNewsPicks LIVEでは10月26日(月)に「自分にとっての『いい仕事』とは?」と題した、学生&新社会人向けのオンラインイベントを開催した。
 本記事では、【ニューノーマル時代の「脱・働かされキャリア」を考える】と題したセッション内容を紹介。
 ジョブ型により「キャリア自律」が推進され、雇用の流動性が加速すれば、優秀な人材は会社に留まらなくなるのか? これからの組織と個人の“良いマッチング”とは何か。
 NewsPicks発のキャリアメディア「JobPicks」編集長・佐藤留美をモデレーターに、パーソルキャリア執行役員の大浦征也氏ラッシュジャパン人事責任者の安田雅彦氏がその答えを探った。

日本に合うのはメンバーシップ型とジョブ型のハイブリッド

佐藤 昨今、個人が主体的にキャリアや生き方を考えて行動する、「キャリア自律」や「キャリアオーナーシップ」という言葉がよく聞かれるようになりました。その背景には何があると思いますか?
大浦 キャリア自律は20年以上前から言われていたけれど、これほどまでは注目されていませんでした。
 しかし、大企業に新卒で入社しても一生安泰ではないことが、徐々に明確な事実となっていき、テクノロジーの進化によって働き方も多様になったところに、コロナ・ショックが重なりました。
 そこで一気に働き方やキャリア、生き方を主体的に考える動きが加速したと思います。
安田 そもそも、会社は個人のキャリアフレームをどう作ればいいかわからない。であれば会社が準備したキャリアの梯子を登るよりも、自分でやりたいことを探した方がエンゲージメントにつながるしハッピーですよね。
 メンバーシップ型雇用は入社したらずっとその会社にいるのが前提ですが、ジョブ型雇用は自分のジョブ1本あればいろんな会社で勝負できます。
 キャリア自律はジョブ型雇用との相性も良いので、そんな時代が来て良かったなと思っています。
大浦 ただ、良いことばかりではなく、完全なジョブ型になるとスキルがなければ職を失い、格差を生む可能性があります。
 自分がやりたいことは何か、自分のアイデンティティは何かを知ることは難しいですし、Willがない人も多いはず。
 だから、メンバーシップ型とジョブ型の良いとこ取りをして、日本に合ったハイブリッド型を模索するのが大切だと思います。

普段の仕事から成長機会を探し、市場価値を上げる

佐藤 ジョブ型雇用になると、副業や起業、転職などいろんな選択肢が出てきます。そうなると大切なのは自分の市場価値を知ることですが、どのように意識すればいいでしょうか?
安田 僕は、今の仕事が市場で、どれくらい価値があるかを常に気にしていました。
 たとえば、過去にM&Aプロジェクトへの参画や、経営悪化に伴う子会社のリストラ、評価制度の刷新などを経験したのですが、それを履歴書に書いたらどれくらい市場価値があるのかを考えたんです。
 もちろん、価値が無いからと言って仕事を断るわけにもいかないので、どんな仕事もそう思って乗り切った、という部分もあります。
 ただ、会社からそういう機会を与えられないと、市場価値を上げるための経験は積めないんですよね。
 日本の場合、完全なジョブ型ではなくメンバーシップ型とのハイブリッド型を導入する企業が増えるとするならば、働く人は与えられた仕事の中で何が成長機会なのかを探し、自分のキャリアで“光るピース”にする必要があります。
 会社や上司の側に立つと、成長できるキャリアの種をいかに見つけて社員をサポートできるかが肝心で、それをできる会社が優秀な人材を獲得できるようになると思います。
大浦 あの会社にいると市場価値が上がる、スキルが身につく、社会に必要とされる人材になれるという事実そのものが採用競争力になるのは間違いありません。
 これまでは会社の知名度やブランドが、市場価値でも優位に働いていたかもしれませんが、その会社でしか役に立たないスキルを教えてくれるだけなら、自ずと人気は下がってくるでしょう。

成長機会の多い企業に優秀人材が集まる

佐藤 人事の本音として、成長機会を与えて自律したキャリアを実現させると、人が辞めていくのではないかという恐怖感はありますか?
安田 それはありません。「あの会社には成長機会がたくさんあって、市場価値が上がるぞ」という評判が優秀人材を集めるので、結果的には定着率が高まると思います。
佐藤 その現象は社内でも起こり得ますよね。公募で別の部署に異動できる制度があると、社内でも優秀人材の偏りが発生するかもしれません。
大浦 偏りが発生する一方で、社内のいろんな部署に面白い仕事がたくさんあれば、社内の流動性が高まっても困ることはないと思います。
 外を見て自分の市場価値が上がったことを知ると、安心して定着する可能性の方が高い。
 僕自身も転職を考えたことがなかったわけではありませんが、外部から声をかけてもらったときに、ある意味「今辞めなくても大丈夫そうだ」と思ったんですよね。だから、客観性を持つことも大切だと思います。
安田 ある会社で「会社主導の人事異動をやめて公募制にしたらどうか」と話をしたときに、「そんなことをして全員が人気部署に行ったらどうするのか」と言われたことを思い出しました(笑)。
 これは人気のない部門が存在するのが問題なのであって、企業は働きやすい、エンゲージの高い職場にしようとする努力が必要なんです。

自分の伸びしろや成長機会を探すための副業・兼業

佐藤 先ほど、自分のことを知るのは難しいというお話がありましたが、自分を知るための有効な手段があれば教えてください。
安田 自分を知るには、一緒に働く同僚に聞いてみるのが一番。会社によっては1on1などの制度がないかもしれませんが、フィードバックを積極的に求めることが重要です。
 また成長機会というものは、やったことのない仕事や背伸びをしてやっと手が届くようなストレッチできる仕事にあります。
 今の自分を知り、なりたい自分を思い浮かべることでギャップを特定し、ストレッチできる仕事に挑戦するのが大事です。
佐藤 そのギャップを特定するのも難しそうですね。
大浦 メンバーシップ型の場合、成長機会は会社が提供する枠組みの中でしか得られないと思いがちですが、副業や兼業を掛け合わせて自ら成長機会を取りに行けば、自分のギャップがわかるようになると思うんですね。
 僕自身、スポーツ業界のキャリア支援をサポートする副業をしているのですが、スポーツ業界のキャリアを語れる人は少ないため、今の会社で培った得意技を持っていったら必要とされました。
 そのように、業界を“ちょっとズラす”副業をすると発見を得られると思います。
佐藤 たしかに、今あるスキルを持って違う業界に行くと重宝されるケースは多そうです。
大浦 違うフィールドであれば重宝されるだけでなく、そこで新たに得られたものを本業に持ち帰ることもできる。そうすれば、また新しい価値を本業でも発揮できます。
 それから、自分のビジネスのつながりの中で“ちょっとズラす”副業もポイントになると思います。たとえば、営業職なら自社の商材を使うB to B企業、メーカーにいるなら卸しや小売り企業で仕事を経験するのはとても良い。
 1つの得意技だけでなく、2つ3つのジョブやスキルを持てるようになると、組み合わせ方 によってキャリアの柔軟性や安定性にもつながると思います。
安田 そうですね。副業といっても、1個の仕事では生きていけないからもう1個の仕事をする「サバイバル型副業」よりも、成長機会や自分の伸びしろを探すための「ディベロップメント型副業」を人事的な観点からは奨励したいですね。

「絶対に意味がない」仕事以外は引き出しにする

佐藤 希望していない部署に配属されると、今の仕事に意味があるのかわからない、将来にどうつながるのかが見えづらいと考える人は少なくないと思います。そういった人へのアドバイスはありますか?
安田 実は、私も最初はWillがありませんでした。でも、たまたま専門職の人事に異動することになってその後人事の責任者になりたいと思ったときに、足りないものはなにかと、パズルのピースを埋めていく感覚でキャリアを考えるようになりました。
 とはいえ、自分の意思ではどうにもならないことはたくさんあるから、今いる環境の中で少しでも成長の種を発見しようとする姿勢を持つのが大事だと思いますよ。
大浦 一つひとつの仕事に意味があるのか想像できなくても、「本当に役に立たなそう」「絶対に意味がないかも」というラインはわかるはず。
 たとえば、マーケティングを希望していたのに営業に配属されたとき、自分のラインにギリギリでも収まっていると思えるなら、営業の仕事を意味ある経験=引き出しにすべきです。
 そうして一つひとつの引き出しを増やしていけば、振り返ると意味のある線になっているはずですから。
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