RCEP合意の意味
11月15日、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が合意に至った。
日本、中国、韓国、ASEAN(東南アジア諸国連合)10ヵ国、それにオーストラリアとニュージーランドを加えた15ヵ国による広域自由貿易圏の誕生である。世界貿易額、GDPの約3割を占める。
〔PHOTO〕内閣広報室
オンラインでの調印式に、14ヵ国の首脳とともに参加した菅義偉首相は、胸を張ってこう述べた。
「日本は一貫して、自由で公正な経済圏を広げ、多角的自由貿易体制を維持し、強化するために率先して行動してきた。RCEPは市場アクセスを改善するのみならず、知的財産や電子商取引のルールを整備し、地域の貿易や投資を促進し、サプライチェーンの効率化を促すものだ。コロナ禍で世界経済が低迷し、内向き思考も見られる中でも、自由貿易を推進していくことが、よりいっそう重要だ」
まるで日本が主導してきたかのような物言いに、私はやや戸惑いを覚えた。
たしかに、2年前に調印にこぎつけたTPP11(CPTPP=11ヵ国による環太平洋パートナーシップ協定)は、日本が主導したものだった。だが今回のRCEPの合意を主導したのは中国である。日本はむしろ、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の締結を優先し、その後はインドの参加にこだわり、RCEPの早期締結に難色を示し続けてきたのだ。以下、この経緯を改めて述べたい。