テレワークで家庭のIT整備加速 デジタル時代にプリンター再評価のなぜ

テレワークやオンライン学習の急速な拡大で、家庭のIT環境の整備が加速している。これまで手軽で多機能なスマートフォンにIT利用の集約が進んできたが、職場や学習塾並みの長時間利用が増え、じっくり使えるパソコンや周辺機器に回帰。家庭向けのインクジェットプリンター市場も盛り上がっている。デジタル化でペーパーレスが進展しているいま、なぜ再評価されるのか。IT市場に詳しい専門家や利用者、企業の声から市場動向やプリンターの役割を探った。

「仕事用」が需要を牽引

平日昼の静かなリビングにカタ、カタ、サッサッサと給紙・印刷の音が響く━都内の建築事務所で働く30代女性は4月以降、自宅のプリンターを動かすのが日常の光景になった。それまで経理・総務職として経費精算や支払い明細など大量の書類を事務所の複合機で印刷していたが、出社抑制でテレワークに移行。自宅で仕事を続けるなか、従来は年賀状など「年数回程度」だったプリンターの利用が飛躍的に増えた。

印刷枚数も大量になるため、3月に社費を活用して特大容量タンク搭載のキヤノン「G3310」に買い替え。ブラックボトル1本でモノクロが約6000枚印刷でき、従来のカートリッジ式に比べてインク交換の手間が減ったという。女性は「細かな数字が並ぶ書類のチェックなどは、紙の方が見やすく効率的だ。小学2年と3歳の子どもがいるので、外出自粛期間中は教材や塗り絵シートも印刷した」と笑顔で語る。

キヤノンによると、今年3~5月の家庭用インクジェットプリンター「PIXUS(ピクサス)」シリーズの購入者の用途のうち、「仕事」は41・7%※に上った。昨年10~今年2月の26・1%から15ポイント上昇し、テレワークの普及で家庭での仕事利用が急速に広まっている格好だ。この動きが需要を牽引(けんいん)し、キヤノンの今年1~6月期のインクジェットプリンター販売台数は前年同期比9%増と大幅に伸びている。

※PIXUS購入者アンケートより 2019年10月~2020年2月(N=2,994)、2020年3月~5月(N=4,940)

スマホ一辺倒からパソコンへ揺り戻し

ITや家電業界に詳しい調査会社BCNチーフエグゼクティブアナリストの道越一郎氏は「家庭のIT環境はスマホ一辺倒から、パソコンや周辺機器への揺り戻しが起きている」と分析する。

BCNチーフエグゼクティブアナリストの道越一郎氏
BCNチーフエグゼクティブアナリストの道越一郎氏

これまで通勤・通学など日常的に移動を伴う生活では、スマホが手軽さから存在感を高める一方で、高機能なパソコンやプリンターを含む周辺機器は職場、趣味など利用場面が限定される傾向にあった。だが、新型コロナウイルスの影響で外出や出社が難しくなると状況が一変。パソコンや周辺機器のほか、高画質の薄型テレビなどの販売が好調で、自宅でじっくりと使用する本格派が人気を取り戻している。

テレワークも当初、低価格の機種で間に合わせる傾向があったが、働き方のニューノーマル(新常態)として定着し、「パソコンにカメラが付属していても、高画質なウェブカメラを買うなどより高機能なものを求める動きが出てきた」(道越氏)。個人のIT端末を仕事に使う「BYOD(Bring Your Own Device)」も徐々に認知を得ており、社員がこだわりを投影する余地は広がっている。

道越氏は「テレワークで多くの業務を進められると分かったので、新型コロナが収束しても、家庭で働く環境を充実させるIT機器の需要は堅調に推移する」と予測した。

大容量、低コストのタンク式に移行

実際、家庭向けプリンター市場もカートリッジ式から、大量印刷が可能なタンク式に人気が集まっている。一般的なカートリッジ方式の場合、キヤノンでは大容量タイプのブラックインクで約25.7ml(BCI-380XL PGBKの場合)だが、タンク方式はブラックインクボトル1本で約170ml(GI-30 PCBKの場合)とまさに大容量。キヤノンの主力機種「G6030」は特大容量のギガタンクを搭載し、1回の充填で約7700枚と大量のカラー印刷ができ、インク切れの不安や交換の手間を大幅に減らした。

印刷コストもA4普通紙1枚でモノクロ約0・4円、カラー約0・9円(いずれも税別)に抑え、ストレスのない仕事環境と家計負担の抑制を両立してテレワークのニーズに応えている。

キヤノンマーケティングジャパンで商品企画を担当する稲垣さんは「家庭でも仕事の資料や学習塾の教材など大量の印刷が求められるいま、大容量で低コストの利点が生きる」と強調する。さらに、キヤノンマーケティングジャパンでは、テレワークで課題になるセキュリティー対策のサービスも用意した。一部企業では情報漏洩(ろうえい)などを防ぐため、家庭のパソコンにファイルの保存を禁じ、実質的に印刷が不可能だった。これに対し、キヤノンが展開するリモートプリントサービスは、会社でクラウド上にファイルをアップロードすることで、どこでも印刷が可能な環境を整えている。

「G6030は、前面カセットと後トレイに合計350枚の大量給紙が可能」と説明する稲垣さん
「G6030は、前面カセットと後トレイに合計350枚の大量給紙が可能」と説明する稲垣さん

新型コロナ以前はデジタル化の進展はペーパーレスを後押しし、プリンターの需要は縮小すると見込まれていた。だが、実際はテレワークやオンライン学習などの普及は印刷需要の根強さを印象付けた。稲垣さんは「家庭向けプリンターは仕事利用の拡大と並行して、子供向けペーパークラフトの印刷需要が増えた。仕事をきっかけにプリンターを日常的に使うことで、写真印刷や子どもの遊びなど新たな活用法を見つけてほしい」と話した。

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提供:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

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