日本の新型コロナウイルス対策は死亡者、重症者が少ないという点では結果的に成功していると言えるが、それは政策的、戦略的に導かれたというよりも国民の側の努力によって成し遂げられたと評価すべきだ。問題は経済だ。
経済協力開発機構(OECD)が各国の2020年と21年の経済成長率の予測を出しているが、21年については中国が8.0%、米国も4.0%、欧州も5.1%と高い成長率に戻るとされる。そのなかで日本の21年の成長率予測は1.5%と低い。死者、重症者が少ないのに、経済回復は非常に遅いとみられている。これからの経済政策を誤ると日本社会と経済に大きな影響が残る。
経済対策はこの半年が勝負
特に心配なのは少子化だ。厚生労働省によると5~7月の妊娠届の件数は前年同期比で11%減っている。感染を懸念して出産を控える、里帰り出産もできない。それだけではなく、結婚をして出産をする経済的な基盤が崩れている。来年以降の出生数は激減するだろう。経済にも相当大きな影響がある。ここ半年、1年でどれだけの経済政策を打てるかが勝負になる。
前回の寄稿<「財政出動100兆円」で家計に行き渡る支援を>でも訴えたが、日本の財政支出は少なすぎるし、遅すぎる。米国は3月、7月の第1弾、第2弾とあわせて合計5兆ドル強、国内総生産(GDP)の約4分の1の規模の財政支出を打とうとしている。日本もGDPの4分の1と考えれば、100兆~120兆円が必要だ。
そこから考えれば1次、2次補正予算で「真水」と言われる財政支出が計58兆円では極めて貧弱だ。3次補正をやるのであれば、トータルで100兆円超になるように、最低でも50兆円規模の財政支出をやる必要がある。でなければ主要国のなかで日本だけが経済回復から置いていかれることになる。
「学生、地方、医療」に支援を
政府の支援で足りないのは「学生」「地方」「医療」の3点だ。先日、東京・吉祥寺で街頭演説をしたところ、多くの学生が来てくれて「いまだにオンライン授業ばかりで、図書館も使えない、実験もできないのに授業料だけとられる。もうやめようかと思っている」と言っていた。ここは徹底的に応援しなければならない。地方創生臨時交付金もいままで3兆円出しているが、5兆円は必要だ。
医療については冬場にかけてインフルエンザの同時流行の懸念もある。診療抑制で地方の病院の経営も非常に厳しくなっている。支援をしないと安定的な医療体制が維持できない。これまで3兆円出しているが、プラス5兆円で計8兆円は必要だと考える。
年収960万円以下に追加の定額給付金
さらに家計支援と企業支援がまだまだ不十分だ。特に家計支援としての定額給付金はもう一度やるべきだ。コロナでは全員が困っているので、本来はベーシックインカム的に考えて、全員に給付すべきだ。ただ、所得の高い人まで一律に対象にすることには批判もあるので、現実的には所得制限があってもやむを得ない。児童手当の所得制限とほぼ同じ水準の年収960万円以下をめどに、年内にでも追加の10万円給付を行うべきだ。さらに状況を見て、さらにもう一回、給付を行ってもいい。
そのうえで、消費を活性化するために、消費税率を半年か1年の期限を切って0%にすべきだ。
IT化の前に「ふりがな」問題
定額給付金や持続化給付金の手続きで、行政のIT化が遅れていることも明らかになった。よく縦割りの問題と言われるが、私はむしろ「…
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