動画界のパイオニア明石ガクトは、講座プロデュースも達人なのか?

2020/11/20
最前線のトップランナーと共創するプロジェクト型スクールNewsPicks NewSchool。多くの人気講座がひしめく中、注目を集めたクラスの1つが明石ガクト氏による「動画プロデュース」だ。

今回は、その中でグループを率いて熾烈な競争を勝ち抜いた4名の「明石チルドレン」にインタビューを試みた。本講座での学びを振り返りつつ、NewSchool「動画プロデュース」全体について総括する。

動画『プロデュース』を学べる場所が無かった

── 皆さんが、なぜこの明石さんの「動画プロデュース」を受講しようと思ったかを教えて下さい。
桜屋敷 まず、明石さんから学んだ「プロデューサー」の定義についてお話させて下さい。多様な能力を持った人々をまとめ、何らかの目的を達成していく・ゴールまで導く人がプロデューサーです。
大雑把に言えば、世の中にどのような動画を届けるか、企画の根源を考え全体を管理する人がプロデューサー。そのコンセプト実現のため現場に指示する人がディレクター。プロデューサー・ディレクターの意図を具現化し制作する人がクリエーターです。
── つまり『動画プロデュース』は動画撮影や編集のスキルを学ぶ場では無かったと?
新崎 その通りです。プロデューサーになるためのフレームワークを学び、実践形式で習得に向けて反復練習する講座でした。
これまでの歴史の中で、テレビ・CMなど従来の映像プロデュースについては様々なノウハウが蓄積されています。しかし動画という新しい分野に関しては十分に体系化されていません。
それを整理し伝えることで、一部の人たちの感性で創られていた動画を多くの人に標準化することが明石さんの狙いだと感じています。
野田 そうですね。まさに私がそうだったのですが、プロデュースする人が仕事の全体感を理論理屈で把握していなければ社内の意思疎通もうまくいきません。
ディレクター・クリエーターまで一気通貫して企画意図を理解してもらってこそ、企画が本当の意味で実現するからです。
しかし、動画プロデューサーという船の舵取りの仕事を体系的に学べる講座は見渡す限りありませんでした。
内田 仕事で動画の案件が増えていく中で、今の仕事の仕方や考え方が正しいのか、答え合わせできる場が見当たりませんでした。
今回その分野の第一人者である明石さんの勝ちパターンを知り、自分の考えがどの程度合致しているかを照らし合わせることができました。
戦略を明確に提示してくれるクライアントばかりではありません。そうではない顧客にも明石さんの3Cというフレームワークを活用することで、良い提案ができるようになると思います。

本当のクライアントは視聴者

──「3C」というフレームワークについて、詳しく教えて下さい。
新崎 3Cとは、明石さんが動画プロデュースを誰にでもできる形として再構築したものです。
キャプチャー・コネクト・コンストラクトという、頭文字に「C」がつく要素で構成されています。
フレームワークに沿ってポイントを抑えることで、企画の再現性を高めることができます。
桜屋敷 今までも近いことを言っている人はいました。しかし本当に論理立てて説明できる人はいなかったように思います。
この形に沿うことで動画プロデュースのできる・できないが、才能の問題によるものではないということが理解できました。
内田 3Cを理解してこそ本当の意味でプロデューサーだ、という明石さんの教えでもあります。
野田 撮影や編集のテクニックではなく、特に差別化要因となる「ストーリー」を生み出すためのフレームワークですね。
── まず、キャプチャーとは?
内田 「社会に眠る集合的無意識を捉える」ことです。ターゲットの潜在的ニーズを捉え、整理します。
要はターゲットも認識できていない、無意識の「あるある」を浮かび上がらせることです。
── 例えば、ユニクロのヒートテックに置き換えると、キャプチャーはどうなりますか?
桜屋敷 暖かい下着があったら、という集合的無意識ですね。
野田 ヒートテックが出る前はババシャツといわれる下着しかありませんでした。寒いから着たいけど着るのは恥ずかしい、オシャレじゃないという集合的無意識があったと思います。
そして、これらを解決したいというターゲットの欲求と、クライアントの目的を接続することをコネクトと言います。
── 2つ目のC、コネクトですね。
内田 明石さんの言葉を用いるとコネクトとは「それぞれが持つ文脈を共感で接続する」こと。深掘りしたキャプチャとクライアントのニーズをどう繋ぐかです。
新崎 エモーショナルに繋ぐべきなのか、クリエイティブに繋ぐべきなのかなど、最も刺激できる繋ぎ方を検討することで爆発力が変わります。
── では、コンストラクトとは?
新崎 「最適な動画フォーマットで構築」すること。例えるならキャプチャー・コネクトは、こういう家を作ろう、どんな素材を使おう、といった内容。それに対してコンストラクトは部品レベルの話。
桜屋敷 世に出すときの形状を具体的に決定する段階です。
内田 最適なアウトプット方法を検討するという意味では流通方法も表現方法も含むため、意味が広いです。
── なるほど。明石さんからこの3Cを学び実戦したのがこの3ヶ月だったと思いますが、みなさんはこの学びを今後の仕事に活かせそうだと感じていますか?
内田 既に大きな変化を感じています。
今まではクライアントからお題をもらって、その枠内でどのように最適解を出すかを目指していました。
しかし今では3Cに沿って考えることで、クライアントが気付いていないターゲットの集合的無意識を、意識的に考えることが習慣化されたと思います。結果、クライアントの課題解決に向け、一歩踏み込んだ提案が可能になりました。
桜屋敷 僕も3Cに基づいて考えるようになったことで、本質的にクライアントのためになる、視聴者・クライアント両方のメリットを追う提案ができるようになりました。
印象に残っている明石さんの言葉で、「本当のクライアントは視聴者」というものがあります。そもそも3Cがその視点で生まれているからこそ、それに沿った提案が重要と再認識できました。
野田 講座を受けた後で、ある会社の新サービス紹介の動画制作と広告配信の案件を頂いたのですが、早速受注に繋がりました。
今後も3Cを活かして企画・制作から配信・運用改善まで一気通貫でクライアントのマーケティング活動をサポートできればと思います。
新崎 プロデューサーとしてのコンパスを得ることができたということですね。これからの仕事の指針が明確化したことで確実に成果に繋がると断言できます。

プロデューサーとしての在り方を学べた

── 明石さんのクラスでは、動画制作の実践が最終課題として課されたとのことですが、皆さんのチームが優秀作品に選ばれたと聞きました。どのような課題だったのでしょうか。
新崎 「NewSchool第1期の講師(プロジェクトリーダー)を取材し、魅力的な動画を創れ」という課題でした。
僕のチームは佐々木紀彦さんをクローズアップしました。佐々木さんはMCをやっていることが多く、ご本人を取り上げたコンテンツが見あたらなかったので。
── 最も印象に残っていることは?
新崎 優秀なメンバーを通じて本当にたくさんのことを学べたことです。
プロファッショナルなメンバーを生かすために、リーダーとしてチームビルディングすることは難しくも楽しくもありました。
時には朝4時ごろまでZOOMで議論し、全員が1mmも妥協しなかったことが印象的です。
野田 私たちは当初、3Cを解説する学び動画を検討しましたが、NewsPicksでも知名度の高い明石さん自身にフォーカスする方がニーズが高いと考えました。
作品を創る上では私もチームビルディングに苦労しました。全員に協力してもらうことが難しく動画の素人だけで挑むことになってしまい、明石さんにも心配されました。
ただ、どうしても勝ちたかったので、評価されていたチームの作品やNewsPicksの動画コンテンツ、テレビ番組などを徹底研究しました。
桜屋敷 僕は自分自身が受講するかどうか悩んだ眞鍋亮平さんの広告クリエイティブ講座をテーマにしました。
そのクラスはNewSchool第1期の中でも特に情熱的なクラスで、講師の真鍋さんと受講生の双方の繋がりが非常に強かった。それこそ「広告クリエイティブプロジェクトロス」が生まれたほどです。
それだけの熱量をどれだけストレートに表現しつつ、どのようにまとめるかが難しかった。メンバーで相談に相談を重ねたことを覚えています。
内田 自分もマクアケの坊垣さんの講義を受けるどうか悩んでいたこともあり、D2C実践講座をテーマに撮影しました。実際にマクアケさんと仕事をしているため、題材として構築する以上、必ず成果に結び付けたかった。プレッシャーのかかる中、選ばれて本当によかったです。
課題を進めていく中で印象深かったこととしては、プロデューサーとしての在り方を学べたことです。
自分の考えと視聴者の反応のバランスを取りつつ、最終的に決定するべき存在はプロデューサーである自分自身。明石さんを含めた様々な意見を踏まえ、ソフトランディングまで持っていくことの重要性を再認識しました。

明石ガクトの気遣い力

── お話を聞いているだけでも、課題がとても重く、だからこそ得られたことが多かったことも伝わってきます。ちなみに、明石ガクトというパイオニアから「動画プロデュース」以外で学べたことはありますか?
桜屋敷 分かりやすく伝えることの重要性です。
授業の多くはゲスト講師の方に向けて我々が課題を提出し、FBを頂くというパターンで進みました。
その中で、明石さんは常にゲストのコメントを生徒に分かりやすく解説してくれました。本当に理解しているからこそできることだと思います。
内田 明石さんが人から愛される理由が分かりました。
桜屋敷さんの言う分かりやすく伝える力は、きちんと相手に伝わっていないことにフラストレーションを感じるほどの、明石さんの気配りの賜物でしょう。
そして伝える時にはプラスの感情を乗せて伝えるので、尚更周りに喜ばれる。良い仕事をしているだけではリピーターは付かない。人となりあってこそ。プロとして本当に勉強になりました。
新崎 印象的だったことが、僕らの課題に対して「このままじゃまずい」と喝を入れてくれたこと。本気で向き合ってくれていると感じ、ギアが上がりました。
提出した課題を全員分、毎回見てくれており、だからこそ惰性でやっていると見抜かれてしまう。しかし、そういう人を無視せず喝を入れてくれるのは愛があるからできることだと感じました。
野田 どんな細かいことでも、「見て覚えろ」ではなく直接言葉にして教えて頂きました。
取材相手に対する配慮の仕方など、一見動画制作に関係ないと思われることも、ここまで気を遣わないといけない、配慮しなければいけない、と具体的に指導して頂き感謝しています。

青春・文化祭の前日・熱狂

── NewSchoolの『動画プロデュース』を総括すると?
桜屋敷 会社から勧められたことがきっかけで受講したのでNewSchoolも明石さんも実はそれほど知らず、むしろビジネススクールに懐疑的ですらありました。
しかし、講座内容を仕事に転用したところ「劇的に企画の説得力が変わった」と上司から言われるようになり、目を見張る成果に繋がりました。
また、それまでは閃きで勝負するタイプで閃かない期間が苦痛でした。しかし今は理屈により解決の糸口が見えるようになり、以前より動画制作が楽しくなり、受講して本当に良かったです。
内田 「青春をありがとう!」が正直な感想。文化祭の前日のような感覚を味わい、この年齢になって改めて友達ができました。
数名のメンバーとは今後も一緒に仕事することが決まりました。世の中の課題を自分たちのやり方で解決していこうと話し合い、実際に動き出しています。
まだ背中は遠いですが、明石チルドレンに止まらず明石さんの座を奪いにいきたいですね(笑)。
新崎 内田さんの「文化祭の前日」という話、物凄く共感できます。社会人になってから、これほど本気で負けたくないと思ったことは無かったかも知れません。まさに熱狂できたと感じています!
そして何より、素晴らしい出会いに感謝しています。講師の明石さんのみならず、出会った全ての人が尊敬できました。そういった出会いがあったからこそ、自分の立ち位置・強み・不足点にも気付くことができ、「得した」という感覚しかありません。
野田 初めてオンラインの良さを実感しました。
始まるまでは、リアルでなければ本格的に学べない・関係性は創れないと思っていました。しかし今は、オンラインだからこそ場所を超えて多くの人と繋がることができると、メリットを感じています。
また、オンラインでも信頼関係が築けるのだと驚いています。それぞれ普段の仕事がある中で、合間を縫って必死で打ち合わせを繰り返したからこそ生まれた人間関係。そこに距離は関係ありません。
あえて問題点を挙げるとすれば…。動画プロデュースに賭けていたからこそ、終わった今、寂しさを感じることですかね。
(構成:KIK)