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JALの“ドアマット”はどこへ消えた?

かつて日本航空(以下、JAL)は乗降時、ドアマットを敷いていた。しかし今、そのサービスはおこなわれていない。なぜか?
JAL 日本航空 ドアマット エアライン カーペット ジャンボ機 DC10 DC8 ダグラス ボーイング 747400
JAL 日本航空 ドアマット エアライン カーペット ジャンボ機 DC-10 DC-8 ダグラス ボーイング 747-400
ギャラリー:JALのドアマットはどこへ消えた?
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かつてJALの飛行機に搭乗すると、専用の真っ赤なドアマットが敷かれていた。全員が搭乗すると、ドアマットは折り畳まれ、客室乗務員用のジャンプシート近くに保管された。

現在、このサーヴィスは提供されていない。日本航空の広報担当者は「国内線は1981年まで、国際線は2000年前後までドアマットを敷いていたようです」と、述べる。訊くと、社内でもドアマットにかんする資料があまりないそうで、当時を知る人たちから情報をかき集めたという。

赤いドアマットが映るかつての資料。

ドアマットが映る当時の資料。なお、ドアマット単体の写真は見つからなかったという。

ちなみに、ドアマットのサーヴィスはいつから開始されたのか? 前述の担当者によれば「1973年ごろのようです。主たる理由として、ファーストクラスエリアに敷かれていたカーペットの汚れを防止するのが目的だったようです。と、申しますのも、かつての機内カーペットは、鮮やかなレッドなどが使われていたため、汚れが目立ちやすかったからです」と、話す。

現在の機内カーペット色は濃いグレーで、汚れがあまり目立たないようになっている。が、15〜20年ほど前の主力機だったボーイング「747-400」型機では、明るいベージュだった。これは汚れが大変目立ちやすかったそうで、現在のグレーに変更されたという。すくなくともこの10年ほどは、汚れの目立たないカラーを選んでいるとのこと。それゆえにドアマットを敷く必要がなくなったようだ。

また、ボーディング・ブリッヂの普及によってタラップからの搭乗が減り、汚れが少なくなったのも理由のようだ。

赤いカーペットが敷かれたかつてのボーイング「747」。

アッパーデッキはベージュだった。

20年ほどまえの747-400型機のカーペットも明るいベージュだった。

747-400以前のダグラス「DC-8」などの機内カーペットについて、JALの広報担当者は「あくまで推測の域ですが」と、前置きしつつ「今ほどカーペットの色や柄の選択の幅がなかったので、鮮やかなレッドなどを選んでいたのかもしれません。現在は、柄やカラーなどを細かく指定出来るのでオリジナルのカーペットを製作していますが、過去の写真を見ると単色のものがほとんどで、たとえば“赤、青、黒の3色から選んでください”といった程度の選択肢だったのかもしれません」と、話す。

ダグラス「DC-8」の機内カーペットはブルーも使われた。

ちなみに、ドアマットの出し入れは新人の客室乗務員が率先しておこなっていたそうで「意外と重いため、クルクル巻くのに大変だったようです」とのこと。せっかくなので当時のドアマットを見せてもらおうかと思ったが、JAL社内に残っていないという。残念。

近年、ドアマットのサービスを提供するエアラインはほとんどない。JAL同様、機内カーペットに汚れの目立たない色を使っているケースがほとんどだし、コストや重量増の問題もあるはず。かつて空の旅が今より“ちょっと”高嶺の花だった時代らしいサーヴィスだったのだ。

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文・稲垣邦康(GQ)