名言入りTシャツ、2時間の演説…「完全に間違った」採用面接【ネギ1本1万円で売る男】
なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(27)『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は脱サラ後に農業を始めた中途参入組。しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。
注目書籍『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』から毎日連載企画。
第27回は、初年度、従業員募集で失敗した体験談をお届け。残り4回です!>>今までの連載はこちら!
“仲間”に公認Tシャツを着せた
「営業1課ねぎびと」という名前を考えていたときは、営業マンなんて簡単に採用できると思っていました。ところが、いまだに営業のできる人が入ってこない。上手に説明できる人はいっぱいいても、心理的駆け引きをしながら、交渉を有利に進められるようなタイプがいない。
いまや山形県人の気質はかなりわかるようになりました。でも、東京から移ってきたばかりの頃は、前の会社の常識を引きずって、トンチンカンなことばかりしていた。
初年度、ようやくネギができた。あとは収穫して、むいて、出荷するだけ。そこで、地元でパート・アルバイトの募集をしたのです。人を育てる自信はあったので、「やる気のある方。100%採用します」とハローワークに求人を出した。
すぐ応募がきました。女性5名、男性1名。中高年ばかりです。面接に来たら即採用ですから、すぐ仲間として認めて「公認Tシャツ」を着せた。
師匠から「スーツで畑に来るな」と注意されてから、ジャージで作業するようになりましたが、やっぱり戦闘服感がないと気分が引き締まらない。そこで、僕の“名言”が入ったTシャツを10パターンぐらい作っていたのです。
「先頭を歩く者にすべての責任あり」
「人の嫌がることほどやってみよう 人の痛みがわかるいい人間になれるから」
「誰も出来なかったことは俺があきらめる理由にはならない 心友を大切にし、何より出会いを大切にした奴に道は開かれる さあ伝説のはじまりだ」……。
これは般若心経かというぐらい、ギッシリ文字で埋め尽くされたTシャツもありました。黒地に金文字で書かれていた。子供の頃から名言が好きで、そういうのが格好いいと本気で思い込んでいたのです。
面接にやってきたおばさん、おじさんたちにそのTシャツを着させて、ファミリーレストランに連れていきました。
「いいかあ、よく聞けえ! 俺たちは5反、6反のビジネスをするんじゃない。1町、2町のビジネスをやるんだ!」
そう声を張り上げた。孫正義さんの「売上を豆腐のように1丁(兆)、2丁(兆)と数えられるような会社にしたい」という言葉に、すごく影響を受けていたのです。