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「保証されているのは省電力計算」 量子ベンチャーを立ち上げた東北大・大関准教授が語る量子コンピュータへの期待(1/2 ページ)

» 2020年11月02日 11時40分 公開
[井上輝一ITmedia]

 「量子コンピュータで全ての計算が超高速にできるというのは間違った期待だが、できると保証されていることもある。省電力計算だ」──。

 東北大学で量子コンピュータを研究し、ベンチャー企業シグマアイも立ち上げた大関真之准教授が、10月28日に開催された「第1回 量子コンピューティングEXPO【秋】」(幕張メッセ)の講演で、量子コンピュータ自体の現状や、他の市場へ影響する可能性などについて解説した。

量子ベンチャーのシグマアイも立ち上げた、東北大学量子アニーリング研究開発センター長の大関真之准教授

量子コンピュータは「今、使える状態」

 そもそも量子コンピュータは、今どんな開発状況にあるのか。量子コンピュータには量子ゲートと量子アニーリングという2つの計算方式がある。「自由自在な計算ができるとされているのは量子ゲート方式。ただ、それだけ作るのも大変なのでいろいろな企業や研究機関が努力している最中でもある。量子アニーリング方式は組合せ最適化問題という特定の問題を解くことに特化した代わりに、実業務に関係する問題サイズでも扱える規模になった」と大関准教授は話す。

 いずれの方式にせよ、原子や分子といった微粒子の動きを記述する量子力学に従ったコンピュータだ。「こう聞くと量子力学を知らないと使えないのだろうと思われるかもしれないが、そうではない」と大関准教授。

 「量子コンピュータで使えるソフトウェアをQunaSysやJijなどのベンチャー企業が作っている。そうしたソフトを使えばC言語やPythonなど、エンジニアが普段使っているプログラミング言語で量子コンピュータを動かせる。このために量子力学を勉強したりする必要はない」(同)

 QunaSysは量子化学計算を量子ゲート方式の量子コンピュータで行えるようにするクラウドサービスを開発している。Jijは量子アニーリングを使ったミドルウェアを開発中。同展示会に出展していたblueqat社は量子ゲートでも量子アニーリングでも使えるPythonのシミュレーション環境「blueqat」を提供している。

 「このようにいろいろな企業が誰でも使えるツールを用意している。だから今、すでに使える状況だ」と大関准教授は、量子コンピュータを使える環境がすでに身近にあることを強調した。

何でも速く計算できるかは分からない 分かっているのは“省電力性”

 「本やWebメディア、新聞などで量子コンピュータの話題を見かけるかもしれないが、必ず見出しに『超高速で計算ができる』と書いてあるが、残念ながらそんなことはない」と大関准教授は指摘する。

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