2020.10.30

中国経済情報2020年10月号

中国経済:成長エンジンに内需を加えた「双循環」で持続的成長を目指す(79GDPなど)

7~9月の実質GDP成長率は一段と伸びを高め、中国経済の着実な回復が確認された。ただ、旅行など一部のサービスは回復が遅れている。一方、インフラ投資拡大や貸出増を背景とする建設・不動産業の好調など財政金融政策の後押しが成長を支える中で、輸出拡大を背景とする製造業の回復が明確となり、成長の主役交代を期待させる動きも。ただ、欧米経済の回復力は弱く、米中摩擦の激化もあり輸出に多くを期待できないため、中国政府は内需を成長の柱に加えた「双循環」により持続的な成長を目指す方針。

伊藤忠中国拠点注目のトピック

トピック①:新型コロナで急拡大するインターネット医療市場

新型コロナの感染拡大によりインターネット医療市場が拡大している。政府はインターネット診療の保険適用を進め、アリババやテンセントのような大手IT企業もこれまでの医薬品Eコマースにとどまらず、オンライン診療サービスも強化している。引き続き需要の増加が見込まれる中で、現在ばらばらに運用されているサービスの連携やワンストップ化などが進めば、インターネット医療市場は質の向上も伴ってさらなる成長が期待できる。

トピック②:普及が期待される電池交換式EV

政府の後押しによって、電池交換式EVの導入が沿海部の主要都市で進められている。現時点ではタクシーでの導入が中心であるが、消費者にとっては交換時間が数分で済むほか、電池部分のリースによるEV購入価格低下、技術進歩により質が向上した電池の利用可能、など従来の充電式と比べていくつもメリットがあり、個人向け販売も徐々に増加している。電池交換ステーションの設備投資額の膨大さや交換式電池の規格不統一などの課題もある中で、今後どの程度普及が進むのか市場の動向が注目される。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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