[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は29日の定例理事会で主要な政策変更を見送り、12月に追加対策を講じる可能性を示唆した。

声明で「変化する状況に対応しながら、景気回復を支援し、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)がインフレ見通しに与える負の影響を相殺するような良好な金融条件を確保するため、必要に応じて政策手段を再調整する」と述べた。

パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い取り枠は1兆3500億ユーロに維持。中銀預金金利はマイナス0.5%に据え置いた。

ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「理事会は、リスクは明らかに下向きに傾いているとの認識で完全に一致した」とし、「われわれは、パンデミックと感染拡大、および感染拡大抑制策が経済に及ぼす影響の重大性を認識している。こうした認識を踏まえ、次回理事会で政策措置を調整する必要があるとの見解で一致した」と表明。「各チーム、各委員会はすでに作業に取り掛かっている」とし、全ての政策措置の範囲、期間、規模が検証されると述べた。

PEPPの買取枠は現時点で7000億ユーロ分が残っており、ECBは現在、月額約1000億ユーロの資産買い入れを実施中。これにより借り入れコストは過去最低水準に押し下げられている。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「PEPPが5000億ユーロ拡大されるとの6月以降の当社予想を踏襲するが、それ以上のことが同時に実施されるだろう」と述べた。

ラガルド総裁の発言を受け、ユーロは対ドルで急落し、0.7%安の1.166ドルで推移。国債利回りも低下した。

ただ、ECBにできることには明らかに限りがある。ラガルド総裁は、7500億ユーロの欧州連合(EU)復興基金案を巡る遅延があってはならないとし、金融政策は大規模な財政政策で補完される必要があるとの考えを改めて強調。「積極的で協調的な財政スタンスが引き続き重要」とし、状況の悪化に伴い各国政府が財政政策を拡充させることは特段驚くべきことではないと述べた。

その上で、年末までの感染拡大の制御状況でユーロ圏の第4・四半期の経済成長率が決まると指摘。「ECBは(感染拡大)第1波に対応した。第2波にも対応する」と語った。

欧州でも新型ウイルス感染拡大に歯止めがかかっておらず、28日にはフランスが12月1日までの約1カ月間、全土で再び都市封鎖(ロックダウン)を実施すると発表。ドイツも新たな規制案を策定した。

ECBの懸念要因であるインフレ期待の低下を受け、ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのマクロ調査責任者、エルガ・バーチュ氏は「12月の見通しでは、インフレ率のECB目標への回帰がさらに遅れる可能性があることが示されるだろう」と述べた。

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