[上海 29日 ロイター] - 中国の複数の大手国有銀行が今週、オンショア為替スワップ市場でドルを人民元に交換する取引を行っていることが29日、市場関係者の話で明らかになった。中国の金融当局が急速な元高を抑制しようとしている可能性がある。

こうした取引によりフォワード市場で元が下落。元の先高感が後退すると共に、投資家が元を借り入れる際のコストが上昇した。

別のトレーダー2人は複数の大手国有銀行が深夜の時間帯にオンショアスポット市場でドルを購入し、元の急激な上昇を阻止するのを確認したと明らかにした。

中国経済が新型コロナウイルス危機から急速に回復していることを受けて、元は5月以降、対ドルで7%上昇している。

市場関係者は大手銀のドル買いについて、元の急激な上昇を望まない当局の立場を反映したものと受け止めている。

あるトレーダーは「スワップ市場での取引と最近の政策は全て元の上昇ペースを減速させることが目的だ」との見方を示した。

中国オンショア市場で1年物のドル/元スワップポイント<CNY1Y=CFXS>は今週、一時1700ポイントに上昇した。これは元が向こう1年間で2.5%下落することを示している。

リフィニティブのデータによると、大手国有銀のスワップ取引によりオンショア人民元のフォワードは今週、2018年2月以来初めてオフショア人民元のフォワード<CNHFWDOR=>を下回った。

みずほ銀行(香港)の首席アジア為替ストラテジスト、ケン・チャン氏は11月3日の米大統領選が元相場の見通しに著しい不確実性をもたらしていると指摘した。

予想に反してトランプ大統領が再選されれば元は下落に転じ、中国人民銀行(中央銀行)は当面、一段の措置を取る必要がなくなるかもしれないと分析した。

「現時点では元の上昇予想を抑制するための過剰な政策対応はデメリットの方が大きい可能性がある。為替政策のスタンスが定まらなければ市場に混乱をもたらす」との見方を示した。