MRJが世界を飛ぶ日 フォロー

スペースジェット「細々と継続」という三菱重工の判断

平野純一・週刊エコノミスト編集部記者
三菱航空機のジェット旅客機スペースジェットの試験10号機(奥)=名古屋空港で2020年3月18日、兵藤公治撮影
三菱航空機のジェット旅客機スペースジェットの試験10号機(奥)=名古屋空港で2020年3月18日、兵藤公治撮影

 三菱航空機(三菱重工業の子会社)が開発する国産初のジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、開発は大幅な縮小に追い込まれているが、三菱重工は10月30日に公表する中期経営計画でさらに開発費を削減し、事業の縮小を図る見通しだ。

 国際航空運送協会(IATA)は、2020年の世界の航空需要は前年比で66%減少すると予測している。新型コロナで需要の半分以上が吹き飛んでしまった。コロナ前の19年の水準に戻るのは24年と見る。三菱重工はこの長い冬の時代に備える新たな体制を模索している。

厳しいボーイング向け事業

 新型コロナが世界中に広がって以降、航空業界が長期間にわたって厳しいものになることは、三菱重工も十分認識していた。5月には、今年度のスペースジェット開発予算を前年度の半分の600億円として事業の大幅縮小を図った。今回は、さらに中期経営計画で少し長い時間軸の中で計画を見直そうとするものだ。

 三菱重工の20年度第1四半期の最終(当期)損益は、四半期としては過去最大の579億円の赤字だった。しかも、エネルギー▽プラント・インフラ▽物流・空調▽航空・防衛・宇宙部門――という同社の事業分野のすべてで事業(営業)利益が前年同期比でマイナス。エネルギー部門のわずかな黒字を除き、その他の部門は赤字に転落した。「日本初のジェット旅客機開発」は大きな夢だが、聖域なく事業を見直していかなければ、同社の屋台骨が揺らぐことなる。

 中でも、ボーイング向け事業は、今後も厳しいものになりそうだ。三菱重工はB787の主翼、B777の後部胴体を製造している。19年度は…

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週刊エコノミスト編集部記者

1962年生まれ。87年毎日新聞社入社。盛岡支局、サンデー毎日編集部、経済部、週刊エコノミスト編集部などを経て2016年から経済プレミア編集部。23年2月から現職。金融、為替、証券、マクロ経済などを中心に取材。