[ベルリン 26日 ロイター] - 統合基幹業務システム(ERP)大手、ドイツのSAP<SAPG.DE>は26日、クラウド型に全面移行すると表明し、中期の利益率目標を取り下げた。新型コロナウイルスのパンデミックからの回復には想定以上の時間を要すると説明した。

フランクフルト株式市場でSAPは20%近く下落して始まった。

クリスチャン・クライン最高経営責任者(CEO)の戦略は、利益率改善の先延ばしを意味する。

JPモルガンは、SAPの目標株価と投資評価を引き下げた。

シティは、SAPの慎重な見通しは、欧州のハイテク株やソフトウエア株に対する投資家心理を悪化させると指摘した。

SAPはこの1年は経営体制が混乱した。昨年、長年CEOを務めたビル・マクダーモット氏が退任した後、2人の共同CEO体制としたが今年4月にそれが崩れ、クライン氏が単独CEOとなった。

当時、すでに新型コロナが事業に影響を及ぼしていたが、2023年までに5年間に利益率を年間1%ポイント引き上げるというマクダーモット氏が設定した「野心的な」中期目標は維持していた。

EAコンサルトのアナリストは、コロナ前に策定した戦略の破棄は適切な判断と指摘、「クラウドへの移行で利益率を犠牲にするのに良い時期だ。パンデミック経済はそれを正当化する」と述べた。

ルカ・ムシッチ最高財務責任者(CFO)は、報道関係者に対し、戦略の転換で利益率は向こう3年低迷すると予想し、向かい風が追い風に変わるのにそれだけかかると説明した。

サブスク(定額課金)ベースのサービスによるクラウド事業収入は2025年までに3倍の220億ユーロ(260億ドル)となり、長年稼ぎ頭だったライセンス収入を上回る見通し。

2025年の調整後総収入は360億ユーロ、調整後営業利益は115億ユーロで利益率は第3・四半期並みの31.9%と予想した。

投資家からは、企業の基幹システムで知られるSAPがクラウド市場で勝てるのか、プロセスマイニング大手のセロニスのようなより革新的な企業に負けるのではないかとの声もある。

第3・四半期決算(国際会計基準)は調整後総収入が4%減、営業利益は12%減。為替変動の影響を除外した調整後利益は4%増加した。

コロナ禍を受けたロックダウンの再導入を理由に2020年のガイダンスを引き下げた。