「飛び恥」運動波及、ANAHDが持続可能な航空燃料の導入拡大
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グリーンリカバリーも手伝い、世界の大きな流れとして今後SAF利用は拡大し続けると思われますが、航空燃料消費量におけるSAFのシェアが伸びにくい理由は、従来の燃料と比較して2倍ともいわれているコストです。しかしコスト低減を目指すとなると、製造規模の拡大が必要となります。
今後は航空会社がSAFを導入したり、購入を約束のうえプラント建設を後押ししたりするだけでなく、ユナイテッド航空やカンタス航空のように、自らSAF関連のプロジェクトに投資する動きも加速していくと考えられます。
また、バイオ燃料料金の差額分を事業者が支払うことにより、形式的に従業員の出張をバイオ燃料に切り替え、事業に伴うCO2排出を削減するというプログラムもKLMオランダ航空で行われていますが、こういった通常燃料との価格差への補完へ向けた工夫も当面色々と試行していく必要があると感じています。SAF=再生可能代替航空燃料
バイオジェット燃料のことですが、以下のポイントがあります。
①燃料の原材料から第一世代と第二世代とに分けられる
第一世代:食料や飼料用の作物を主原料
第ニ世代:アブラナ、ナンヨウアブラギリ、塩生植物、藻類(ミドリムシなど)
②製造プロセスにおいて、いずれにしても主原料が有機物であり多様である(いろいろと模索してきた)
③一般的には通常のジェット燃料の倍以上の調達コストがかかる
コスト面では
第一世代:ガソリンの約4倍
第二世代:ガソリンの約2倍
④飛行機という人の命に直接的に関わることから、技術的なハードルが高く、燃料としての量産体制が整っていない
⑤もともとあった第一世代バイオ燃料では、エンジンをそのまま使用できないことから、第二世代では、既存エンジンをそのまま使用できることが求められている(機材そのものの調達コストにも響くため)
上記の「調達課題」と「飛び恥運動」の波及に加え、コロナ禍という未曽有の局面ですが、如何にしてエアラインとして、第二世代の燃料調達上の優位なポジショニングを得られるかが、個人的には焦点かと。バイオ燃料については、すでにリーマンショック前後の原油価格の高騰の折から、航空会社は積極的に利用を模索していて、JALもANAもすでに一部の燃料タンクについてバイオ燃料を搭載して試験飛行を行うというデモを行っています。
カーボンニュートラルについてはICAOにより国際的な取り決めが検討されているのをはじめ、今日は菅総理により2050年にはCO2排出量実質ゼロという目標が発表されるなど、コロナによる経営状況の悪化をそう長くは待ってくれそうにないことからも、引き続き燃費のいい飛行機を開発することに加え、バイオ燃料の導入の動きも進めたいという意思表示でしょう。
ただしバイオ燃料は実験的に製造しているだけでは在来の燃料と比べコストは数百倍にもなるような状況であり、量産しても1バレル100ドル近いコストと言われています(現在のシンガポールケロシン価格がおよそ40ドル前後ですので、その価格の高さがわかります)。この価格差をどう埋めていくのか、あるいは高くても一定量の使用を義務付けて利用者にその負担を強いるのか、難しい議論も必要となるように思います。