2020/10/25

現代の教養。ネアンデルタール人は私たちの中に生きている

宮崎大学 教授
地球史上で、「人類」と呼ばれる種は、私たち現生人類だけではない。現生人類が登場する前、そしてその後も、複数の人類が存在していた。
その中でも、私たちと最も近い存在がネアンデルタール人だ。
現生人類とネアンデルタール人が共存していた時代に、両者の間で混血が起きていたことをご存じだろうか。しかもその「痕跡」は、日本人を含む、アフリカ以外のすべての現生人類のDNAにも残っているという。
その事実は、誰がどのように解き明かしたのか。そしてDNA中の「痕跡」は、私たちに何をもたらしたのか──。
東京大学の新村芳人・特任准教授が、新型コロナに関連する最新の研究成果も交えて解説する。

新型コロナの驚きの最新研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている。
日本を含む東アジアでは、欧米などに比べて重症者や死亡者の比率がかなり少ないが、その理由はよくわかっていない。マスクをつけることに抵抗がない、握手をしないなどの文化的背景もあるだろうが、それだけではこの大きな違いは説明できない。
そのため、新型コロナを重症化させないための東アジア人固有の何か─「ファクターX」─があるのだ、と考える人もいる。
9月30日、ドイツ、マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボらは、ネアンデルタール人から受け継いだDNAが「ファクターX」かもしれない、とする驚きの研究結果を発表した。