[東京 22日 ロイター] - ANAホールディングス<9202.T>は事業構造改革の一環として、傘下の格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)を強化する。全日本空輸で貯めたマイルでピーチに搭乗できるようにし、利用を促す。新型コロナウイルスの影響で早期の需要回復が見込めない中、ビジネス客に強い全日空は高収益路線に集約する一方、運航コストが比較的安く、個人客の多いLCCの路線を拡充する。

複数の関係筋によると、ANAは全日空のマイルをピーチで使えるポイントに変換できるよう調整を進めている。27日に発表する事業構造改革案に盛り込む見通し。

新型コロナの感染拡大でインターネットを使ったテレワークの定着などで出張が減り、ANAは全日空が強みとするビジネス需要はコロナ前の水準には戻らないと判断。一方、旅先で仕事をするワーケーションの浸透などで、個人需要は比較的戻りが早く、低料金のLCC利用は増えるとみている。

ピーチは21日、中部空港発着の国内線就航を発表。新千歳と仙台の2路線を12月24日から運航し、さらなる路線追加も検討している。ピーチの国内線拡充は以前から計画されていたが、予定より前倒しで進める。減便中の自社の国際線事業の落ち込みを補いつつ、全日空が休止する路線の補完をにらみ、当面は国内線事業の拡大を優先する。

一方、全日空は国内線を羽田と伊丹発着の路線を中心に集約し、地方発着路線の縮小を検討している。国際線も羽田発着を優先し、関西、中部、成田の各空港は発着便の多くを当面休止する。

関係筋の1人は「フルサービスキャリアの全日空では採算が取れない。LCCとの路線ネットワーク強化でコロナ禍を乗り切る」と話す。

ANA広報はロイターの取材に対し、コメントを控えた。

27日に公表する事業構造改革では具体的な路線名までには踏み込まない方向。日本政府が地方経済活性化やインバウンドに力を入れる中、「利害関係者(ステークホルダー)との調整が必要なためだ」(関係筋)。

別の関係筋によれば、ANAは同日、2021年3月期が5000億円規模の最終赤字見通しとなることを発表する。旅客需要の急減で収入が大きく減少、航空機の減損も響く。[nL4N2HC2ZA]

固定費抑制に向けた機材や整備費、人件費などの削減策、主力の三井住友銀行や日本政策投資銀行など5行から劣後ローンで4000億円を調達する計画なども公表する。

*内容を追加しました。

(白木真紀 編集:久保信博)