【奥野一成】教養のための投資を通じて「労働者2.0」を目指せ

2020/10/31
NewsSchoolのコンセプトである「学ぶ、創る、稼ぐ」。この「稼ぐ」という領域を実現するために「投資」のマインドを学ぶことは非常に重要です。

今回は『教養としての投資』の著者である、農林中金バリューインベストメンツ最高投資責任者(CIO)の奥野一成さんをお招きし、トークイベントを開催。

個人や企業や社会がより豊かになるために、どう投資を生かしていくのかの観点からお話いただきました。

NewsSchool GINZAで行われたイベントリポートを全2回でお届けします。(イベント開催:2020年7月26日) 
「投資」とはなにか
奥野一成です。私はファンドマネージャーとして13年間投資をしてきました。
良い時期もあればうまくいかない時期もあったりしますが、総じて成功しています。その中で「これは真実だな」と思っていることがあるので、それについてお話させてください。
奥野 一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。
私が行っている投資は、おそらく皆さんが想像する投資とは、真逆のものだと思います。
ほとんどの日本人は、投資を株価の動きを見ながら短期間で売り買いすることだと、認識しています。
しかしこれは「投資」ではなく「投機」です。では「投資」と「投機」の違いはなにか。
わかりやすく、株を「農地」に例えてみましょう。
もし皆さんが、農地を5,000万円で買うことになった場合、どのように考えますか。
作物を収穫するために、農地を耕し、肥料を撒き、耕す人を雇う。これらのコストを差し引き、収穫するまでの1年間で、500万円ぐらいの利益が出ればいいですよね。
長い時間をかけて、その土地からどれだけの作物が取れるかを考える。これが「投資」です。
これに対して、5,000万円の農地が3ヶ月後に7,000万円になるのを期待するような、短い期間でその土地がいくらで売れるかを考える。これが「投機」です。
農地を買うと想定した場合、ほとんどの人たちは「投資」として考えて、数ヶ月後に土地の値段が高騰すると思って買いませんよね。
だから皆さんは投資のマインドを持っていないのではなく、すでに投資を理解しています。
しかしこれが株になったとたんに、株を買って3ヶ月後にいくらで売れるのかと考える。さらに最悪の場合は、買って数秒後に売買しようとするんです。
農地のケースでは、「投資」の考え方を理解していたにも関わらず、株になると「投機」の思考に陥っている。
株には毎日価格がつきますが、株はただの「株券」ではなく、「企業の所有権」です。
企業の所有権の一部を持ち、利益の一部を受け取る。つまり株を買うというのは、「企業のオーナーになる」こと。長期的な視点で捉えてその企業が利益を上げ続けられるか、見極めるのが重要なんです。
皆さんの考える投資の概念とは違うかもしれませんが、真実は常にひとつではありません。
企業の利益は、顧客や社会の課題を解決した対価です。
利益を多く出している企業は、それだけ多くの社会の問題を解決しているんです。
利益を上げ続ける会社に投資をして、自分も「オーナー」として少しずつ利益を得るというのは、少しずつ世の中がよくなっていくことなんですね。
これが資本主義の原理で、これを使わないで世の中を良くしようとすることの方が難しいと思っています。
「構造的に強靭な企業®」を見極める
では「投資」する企業をどのように選べばいいのか。
私は「構造的に強靭な企業®️」に投資しましょうとお伝えしています。
強靭な構造をつくるには、基準となる3つの条件があると思っています。
1つ目は「付加価値の高い産業」。
そのビジネスが世の中に必要か、社会や顧客の問題を解決しているのか。
2つ目は「圧倒的な競争優位性」。
参入障壁の高さであり、コカ・コーラやディズニーのように、敵にまわして勝負するのが嫌になるほど、圧倒的な強さがあるのか。
3つ目は「長期的な潮流」。
人口動態などの、普遍的で不可逆な要因はどんなものがあるのか。
ただしこの「長期的な潮流」は、利益を増大させるもので、付加価値や競争優位性があってはじめて意味のあるものです。
ほとんどの人が、「企業の成長」に注目して株を買おうとするのですが、それは間違っていると思います。
これは非常に重要な論点で、上記条件の1つ目と2つ目に当てはまらない企業を買えば、成長はどこかでストップします。
これからは人工知能だ、自動運転だ、少し前なら太陽光発電が注目のテーマだと言われていました。いま太陽光発電はどうなっているでしょうか。
太陽光発電には参入障壁がない。だれでも参入できます。そのため圧倒的な競争優位性をもって、この事業を成功させている企業は世界中に1つもありません。
短期的な成長やブームに流されず、この3つの条件の揃った企業を見つけてください。そしてその企業の株を短期で売買せずに、保有し続けてください。
強靭な構造を持つ「ナイキ」
それでは「構造的に強靭な企業」を、具体的に見ていきましょう。
スポーツ関連商品を扱っているナイキはご存じですね。米国・オレゴン州に本社を置く企業です。
ナイキはコロナの状況下で、元々100ドルだった株価は65ドルまで落ちました。また2016年の株価だけ捉えると、営業利益は上がっているのに株価は下がっています。これが短期間に見る株価の変動です。
しかし1993年から2018年までの25年間で見続けると、営業利益と株価は上がり続けています。
短期間での変動は些末なことです。少なくとも20年間という長期間で捉え、趨勢(すうせい)を見た上で「どうして利益が増え続けているのか」を考えてください。
ナイキの利益が上がり続けるのは、顧客の問題を解決して対価を得ているからです。駅伝で走っているほとんどのランナーは、ナイキのピンクの厚底シューズを履いています。
いままで長距離ランナーは軽くて薄い靴を履くのが常識でした。しかし、ナイキは靴の底にカーボンプレートを入れ、走る時の反発力を活かすシューズを開発。身体への負担が減少し、記録が上がる。これがナイキの提供している「付加価値」です。
さらに年間4,000億円規模の膨大な広告投資ができる「圧倒的な競争優位性」を持っています。ナイキと同じレベルで、問題解決ができて宣伝力を持つ競合は、もうアディダスしかありません。
先進国において、生活をする上でランニングをする人は10%程度。人口の増加、健康志向の高まりに応じてどんどん増えていきます。これが「長期的な潮流」です。
投資を経て「労働者2.0」を目指す
なぜ投資が必要なのか。それはシンプルにお金が足りないからです。
いまの年金や社会システムは80歳までの暮らしを想定して作られています。しかし平均寿命が伸びて、100歳まで生きられるようになってきました。
ということはプラス20年を補うために収入を増やす必要がある。
一つにはたくさん働いたり、転職や副業をして収入を増やしていく、「自力で稼ぐ」という方法があります。これが一番大切ですし、リスクはない。
そしてもうひとつが、株を長期保有して企業に稼いでもらう「他力で稼ぐ」という方法です。こちらはリスクがある。優秀な経営者が亡くなることや、コロナのような社会情勢は企業にとって打撃です。
つまり「自力で稼ぐ」「他力で稼ぐ」、これを組みあわせて考えることが大切なんです。
株を保有して、企業のオーナーになるのは、その企業の経営者が自分の部下になって働いてくれるということです。
年収数十億円のプロの経営者が、自分のために働いてくれるんですよ。痛快ですよね。
ただし一足飛びに「資本家になりましょう」という話ではありません。いま勤めている会社を辞める必要はまったくありません。
働きながらどこかの株を保有したり、その株や企業を研究する。広い視点で世の中のビジネスに目を向けましょう。自分で行動できるマインドセットを持てれば、会社にしがみつく必要がなくなります。
一番大事なのは「精神的な自立」です。国からの自立、企業からの自立。そういうマインドセットを持っていれば、おのずと経済的にも自立できるはずです。これが「労働者2.0」という概念です。
(構成・撮影:コルクラボギルド)
※続きは明日掲載します
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