全長4395mmと、市街地で扱いやすいサイズ。遠くまで見渡せる高い着座位置も同様だ。くわえてパーソナル性の高い2ドア的なデザインが、ふだんは2人で出かけることの多いユーザーには評価ポイントになるはず。
ベースになっているCX-30の例から類推すると、街乗りだけにとどまらず、遠出も楽しめるはずだ。最近のマツダ車は足まわりの設定が見直され、よりしなやかで快適な乗り心地を実現している。MX-30も例外ではないと推測される。
スタイリングも、好感がもてる。ルーフの前後長はやや切り詰められて、テールゲートの傾斜角がつき、いわゆる“クーペライク”なスタイルだ。全高はCX-30より10mm低い1540mm。SUVとしては背が高いほうではない。
ユニークなのは、フリースタイルドアなる前後ドアのシステムで、これは、前席用のものは通常の前ヒンジのドアだけれど、後席用には、後ヒンジのやや幅の小さなドアがそなわるというもの。2つのドアは観音開きになるので、後席用が小さくても出入りの際の使いにくさはない。
後席用のドアは開閉用のハンドルが外についていない。まずフロントドアを開けてから、後ろのドアの内側に設けられたオープナーを操作して開ける。
メリットは、印象的なサイドビューが実現したこと。まさに2ドアクーペのようなウィンドウグラフィクスと、フロントからリアまですっと延びていくベルトラインによる美しさが生まれている。
当面はマイルドハイブリッドのみ
インテリアデザインも、従来のCXシリーズとは一線を画す。専用にデザインされたのは、フローティングコンソールと呼ばれるセンターコンソールのデザインや、安全性と使い勝手を考えて設計されたというATのセレクターなどだ。
「想定ユーザーの嗜好を世界的に調査したところ、たとえばIT産業に従事している若いひとたちが、リノベーションされた古い建物やコットンのTシャツなどを好む傾向が強いことがわかりました。“ハイテク”よりも“自然な雰囲気”が好きなのかもしれません。それに自信を得て、内外装のデザインを決めました」
MX-30のデザインをとりまとめたチーフデザイナーの松田陽一氏は、そう説明する。
2019年の東京モーターショーで、予告なしに電撃的に登場して驚きを与えたMX-30。あのときはBEV(バッテリー駆動の電気自動車)とされていたものの、日本ではまずマイルドハイブリッド仕様が登場し、のちにBEV版が販売されるという。
搭載するエンジンは「e-SKYACTIV G(イースカイアクティブジー)」と呼ぶ、1997cc直列4気筒ガソリンユニット。これに電気モーターが1基組み合わされている。スタートのときなど、モーターがエンジンの駆動軸(クランクシャフト)に補助的なトルクをくわえる。それによって、内燃機関よりスムーズな発進を可能にする。いわゆるISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)システムだ。
マツダでは「Mハイブリッド」と称する。Mはマイルドの頭文字であり、またマツダも意味しているのだろうか。前輪駆動とAWD、ともに用意される。変速機は6段オートマチックだ。
エンジンの最高出力は115kW(156ps)、最大トルクは199Nm。電気モーターの最大トルクは49Nmだ。マツダ車らしいというか。ことさらなパワーは追求していない。そのかわり、発進時や加速時などはモーターのトルクを使い、マイルドハイブリッドで「人馬一体感を楽しんで」もらえるようにした、という。
燃費は前輪駆動がリッターあたり15.6km、4WDが15.1km(ともにWLTC)。高速ではそれぞれ、17.2km、16.7kmにまで延びる。また、停止のために減速をしていくと、車体が完全停止するまえにエンジンが止まる制御が目新しい。エンジン停止後に加速する必要が生じたときは、ふつうにアクセルを踏むと、モーターが活躍してすかさず再加速に移るそうだ。
価格は200万円台半ばから
マツダは、かなり明確なデザインランゲージをラインナップ全部に適用している希有なメーカーだ。シルエット、面づくり、ディテールの処理など、さまざまデザイン要素に一貫性を持たせて、ひと目でマツダ車とわかるトータル・デザインを実現している。
そんななかで、MX-30は、現存の「CX」シリーズのSUVのファミリーアイデンティティから、あえて逸脱しているようなディテールが印象に残る。