NY撤退後の「鎌倉シャツ」の課題 小島健輔リポート
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アメリカ東部、中西部の男性の仕事着の違いを見る目も養える記事。スーツ(テイラード、ドレスシャツ)を着るのはトップの経営層。中間管理職はジャケット、ワーキングシャツ、センタープレスのパンツ。労働者はブルゾンやパーカ、そしてセールスマンは既成のスーツ。経営層の着るスーツとセールスマンの着るスーツは全くの別物で、階級の違いが一目瞭然です。
鎌倉シャツは、日本的なトラッドのムードもたたえた、ドレスシャツとワーキングシャツの中間的なところに位置する良質なシャツで、日本的な無階級スーツにはよく合います。しかし、NYマディソンアヴェニューに進出したとき、ドレスシャツとしては不適という扱いを受けました。なぜなら「シャツに胸ポケットがついているから」。経営層が着るようなドレスシャツには胸ポケットがつかないのです。すぐに創業者の貞末氏は胸ポケットをはずし、日本で販売するシャツからも胸ポケットを外してしまいました。
NYの事情に合わせたローカリゼーションはすばやく、それをグローバルスタンダードとして日本のシャツにも適用した姿勢は、スーツ文化尊重という意味では素晴らしかったです。が、日本の現実のビジネスマンには不評でした。スーツに階級のない日本ではむしろ、とりわけクールビズの時期に、胸ポケットのないシャツは不便だという声をあちこちで聞きました(社員証やペンが入れられないとか・・・)。
コストパフォーマンスの高い、良心的な製品を作り続けている「鎌倉シャツ」は今後しばらくは国内需要のみに向き合っていかれることと思います。スーツの需要が少なくなったとはいえ、また日本には日本の事情があることも踏まえたうえで、ビジネスシーンにおける立場やTPOによるシャツの着分けについても消費者に正しく伝えていける企業であってほしいと願っています。