2020/10/13

あなたはチームに頼れるか? 諦めないキャリアをつくる「2つの秘訣」

NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
コロナ禍で激変した、私たちの働き方。

リモートワーク やオンライン会議など、仕事とプライベートの両立をはじめとした多様な働き方を支える選択肢が確実に増えてきている。

一方で、自分に合った働き方を決める判断軸の必要性も高まる中で、納得のいくキャリアを実現するためには何が必要なのか。

さまざまな企業の「働き方事例」を共有、研究、体系化する取り組みを行う一般社団法人のat Will Workの代表理事を務め、働き方を選択できる社会を目指す藤本あゆみ氏と、子育てと仕事の両立を体現し、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして活躍する田島絵里氏に話を聞いた。

“リモートマイノリティ”という経験

──藤本さんは、Googleで女性活躍プロジェクトの担当を経て、「働き方」事例を共有するプラットフォームのat Will Workを設立されました。一貫して「働き方」をテーマに活動されていますが、コロナ禍がもたらす社会の変化をどのように捉えていますか。
藤本 そもそも私が2016年に、5年間限定の社団法人 at Will Work を設立した理由は、大きく変化する社会に備えて、「働き方の事例」を共有するプラットフォームが必要だと感じていたからです。
 「働くことにどう向き合うか」は男女問わず大きなテーマであるにもかかわらず、at Will Workを設立した時はその事例を体系化しているプラットフォームはありませんでした。
 そこで、at Will Workという社団法人を作り、カンファレンスなどを通じて様々な働き方の事例を集め、発信しています。
 ここ数年、予想以上のスピードで社会は変化していると感じますね。女性活躍、1億総活躍社会の創造、働き方改革、Work as Lifeと働き方の概念は日々進化しています。
 そして今回のコロナ禍で、リモートワークが広がり「多様な働き方」の概念が浸透した。多くの企業が強制的に変化せざるを得ない状況の中で、個人にとっても日々の働き方を見直すチャンスになっているはずです。
 いま、働き方の選択肢は確実に広がっていますし、コロナ禍を私はポジティブに捉えています。
──具体的にポジティブな変化とは?
藤本 ダイバーシティの重要性を理解していなかった方々が、リモートワークによってマイノリティ(少数派)になる経験をしたことです。
 私はこれをリモートマイノリティと呼んでいます。
──リモートマイノリティ?
藤本 例えば、会議に女性メンバーが1人しかいない状況はよくあること。日常的に、男性ばかりの会議で発言や質問がしにくいなど、女性はマイノリティを体感する機会が少なくないです。
 しかし、リモートワークでは女性だけでなく全員が異なる場所にいるため、会議室で集まるような一体感はなくなります。
 気付いたら一切発言していなかったり、知らない話題が進んでいたり。積極的に参加しないと、取り残されてしまう。
 少数派ならではの寂しさ、悩みはなかなか理解されないものですが、コロナ禍を機にマイノリティへの意識が実感を持って高まったのではないでしょうか。

あなたはチームに頼れるか?

──田島さんは、産休・育休取得後に復帰して、アクセンチュア のストラテジーグループでマネジャーとしてご活躍されています。実際に、このコロナ禍で働き方に何か変化はありますか?
田島 私たちも、ここ半年はリモートワークが続いています。もともと弊社ではオンラインツールを活用したリモートワークが浸透していましたが、ここまでチームメンバーと直接顔を合わせずに仕事を進めるのは初めてでした。
 マネジャーとして、特異な状況下でメンバーに極力不安を感じさせないよう、チームでのコミュニケーションを密にとることは意識しています。
 悩んだり困ったりしているメンバーがいないかなど、リモートが続く今だからこそ以前よりも注意深く気にするように心掛けていますね。特に、仕事とプライベートの垣根が低くなりやすい中で、それぞれの異なる事情を理解することも欠かせません。
──ご自身も出産や育休を経て、子育てとお仕事を両立されています。
田島 はい。チームメンバーと密にコミュニケーションを取ることで、両立を実現できていると感じます。
 チームメンバーに家庭の状況を伝えて、この時間は対応ができないのでメールにしてほしい、緊急時は電話にしてほしい、逆にこの時間は作業ができるなど、細かい連携を取っています。
藤本 チームが、自分らしい働き方を支えてくれている、ということですね。とはいえ、プライベートをチームメンバーに伝えるには少し勇気も必要ですよね。
田島 そうですね。実は、元々プライベートの話をチームのメンバーにすることに抵抗があったんです。人によっては聞きたくないかもしれないな、と。
 でも、私個人の事情でチームに迷惑を掛けることはできない。そこで、少し勇気を出して実際に話してみると、チームメンバーも協力してくれて、うまく仕事が回るようになったんです。
藤本 何かきっかけがあったんですか?
田島 はい。私は育児休暇からの復帰と同時にマネジャーの役割を担うこととなり、よりプロフェッショナルとしての責任を課せられることに、やりがいを感じていました。
 一方で、子育てと仕事の狭間で、夫や実家・義実家の両親に負担をかけてしまう時期が続き、罪悪感を抱くようにもなっていたんです。
藤本 葛藤があったんですね。かなり悩まれたと思うんですが、どのように解決の糸口を探ったんですか?
田島 十分に悩んだ結果、2つの解決策に辿り着きました。自分の譲れないものを決めることと、チームに頼ることです。
 私の場合、娘に会わずに1日を終える日があると、精神的にとても苦しかった。そこでどんなに仕事が大変でも、夜は家族の時間をつくろうと決めて、仕事の進め方や働く時間を調整する必要がありました。
藤本 「家族との夜の時間」を譲れないものと決め、それを実現するためにチームメンバーの協力が不可欠だった?
田島 はい。チームに対しては、大変な局面のときなど、無理をせず真実を伝えるようにしたんです。その代わり愚痴にはならないよう、前向きな提案とのセットは意識しました。
 結果的に、自らをオープンにすることで、メンバーも自分のことを話してくれるようになりました。チームのコミュニケーションが活性化し、全体のパフォーマンスも向上したように感じます。
藤本 私が多くの方に話を聞く中でも、うまくいっている方は田島さんのように譲れないものを決めていることが多いですね。チームの話についても、メンバー同士がお互いの状況を知っているかどうかはとても重要です。
 何に悩んでいるのか、何が大変なのかを知らないままだと、「あの人はレスポンスが遅い」だけの印象になってしまい、無駄な溝が生まれてしまう。これを後から修復するのは難しい。
 チーム内でしっかりとコミュニケーションをとって、1人で頑張ろうとせずに周囲を頼る。それができるかどうかは、家庭と仕事の両立において大きな違いを生むポイントになります。

多様性のある環境が、キャリアの価値観を広げる

藤本 アクセンチュアでは、特にどのような点で働きやすさを感じますか。
田島 大きくはまず2015年に「Project PRIDE」というアクセンチュア独自の働き方改革が始まったことが挙げられます。
田島 多様性を認めることが当たり前のカルチャーがあり、性別や国籍だけではなく、さまざまな観点からダイバーシティも推進しています。
 そのため、個人に合った働き方を実現できる環境だなと実感しています。
藤本 ダイバーシティが土壌にある環境で働いた経験の有無は、その後のキャリアの価値観にも大きな影響を及ぼしますよね。
 私も、グーグル時代にさまざまなバックグラウンドを持った人と働いたことで、価値観が大きく広がりました。
 多様性を認める価値観が共有されている環境だと、個々人の状況は決して特殊ではないという理解が根底にあります。そのため、“お互い様”という感覚も強く、サポートする体制が当たり前のようにあるのも良さですよね。
──田島さんは新卒で戦略コンサルティングファームに入社後、アクセンチュアに転職されたそうですね。なぜ同業であるアクセンチュアに転職を?
田島 実はき方というよりは、これからの時代は戦略×テクノロジーの組み合わせが重要になると考えていたので、デジタルも活用した成長戦略を提案できるようなファームで挑戦をしたいと考えていたからです。
加えて今後のライフイベントに伴って変化する働き方についても意識はしたい。その点で、アクセンチュアがベストな選択肢になりました。
藤本 田島さんのように、プロフェッショナルを突き詰めつつ、働き方も大切にするためには、やっぱりどんな組織で働くかは大切になりますよね。一人でキャリアをつくることは難しいかもしれないけど、チームであれば実現できることもある。
田島 一方で、働きやすい環境で働くということは、成果が出ない言い訳ができないことではあるので、裏を返せばチャレンジングな環境であることは事実です。
藤本 自由と責任はセット。何でもできる自由な環境があるからこそ、成果への責任が実は必要ですよね。
 実は、私も個人的に働きやすいと感じるのは、チームで仕事をする会社なんですよね。個人で成果を追うことと、それぞれの個性を生かしながらでは、チームの方がより高い目標に挑むことができる。それが面白くて。
田島 とても分かります。それに、1人でのアウトプットには限界もありますよね。
 私のチームでは、毎日何度もコミュニケーションをとって、連携を強めていて。他グループのデジタルで専門性を持つメンバーとも連携することで、これまでお客様に提供できなかった価値創出に挑戦しています。
 また、マネジャー以上の役職に求められるのは、チームのアウトプットを最大化させること。個人で100点を出すのではなく、チーム全体で200点、300点を出せるようにすることなんです。
 私自身、そうしてつくりあげた価値を経営者の方に提案して、「これでいきましょう」と認めてもらえる瞬間が本当に嬉しくて。企業の経営に関わる重大な意思決定を、チームで前進させる達成感は他に代えられないですね。

自分の中の小さな違和感を逃さない

──自身の働き方を見つめ直す人が増えている今、何を判断軸に自分と向き合うことが大切でしょうか。
田島 自分の中の小さな違和感を逃さないようにしています。自分の中で仕事か家庭かどちらかを言い訳にしてしまうと、何かが引っかかる。
 そのすぐには言語化できない「違和感」に向き合うことが重要だと思うんです。心の声を無視し続けると、どこかで限界がきてしまう。
 小さな違和感に気づくことができれば、あとは素直に自分が本当に求めていることを突き詰め、追求するのみです。
藤本 ワークとライフを分けることで心の安定が保たれる人もいれば、統合した方が充実感を感じる人もいる。完全成果主義で結果を出しやすい人もいれば、終身雇用や年功序列の文化にいるほうが成果を出せる人もいます。
藤本 世の中的に流行する働き方はありますが、大切なのは、どれが自分にとって心地良くて、働きやすい環境なのか、感じる心をちゃんと持つことだと思うんです。
 働き方って、誰かに押し付けるものでも、押し付けられるものでもない。企業選びにも、絶対的な正解はなく、自分が最も成果を出せる道を選択する能力が重要になってくるはずです。
田島 そうですね。時代の流れに左右されるのではなく、自分がどんなことに興味を持っていて、どんな価値観で仕事と向き合うかが今後はより一層問われてくる。
 デジタル技術の進化によりビジネス環境が激変する真っ只中で、多くの企業が今大きなチャレンジに直面しています。
 お客様の重要な経営判断に関与させて頂きつつ、世の中に大きな社会インパクトを与えることができるのは、戦略コンサルタントの醍醐味。
 こういったチャレンジングな仕事に対して、私が家庭との両立ができているのは、上司や同僚・チームメンバー、家族や友人の協力はもちろんのこと、アクセンチュア自体に「仕事と家庭の両立は当たり前」というカルチャーが十分浸透してきているからです。
 是非、納得のいくキャリアをつくる選択肢の一つとして、弊社が候補に入ると嬉しく思います。
(編集:君和田郁弥、木村剛士 構成:シンドウサクラ デザイン:田中貴美恵)