東日本大震災の復興事業で業績を伸ばした廃棄物処理機械設置業者が、約2億8800万円の所得を隠して脱税したとして大阪国税局から刑事告発され、ほかに約1億円の裏金も作っていたことが取引関係者らへの取材でわかった。約1億円の裏金は、復興事業の受注のために工事関係者ら約5人に渡していたという。

【連載】歪んだ復興マネー
復興事業の現場で異常な接待が繰り返されている…。建設業界から伝わる声をもとに取材を進めると、不正経理による裏金作りの実態が見えてきました。連載形式で背景や構造を解き明かします。

 関係者によると、法人税法違反容疑で告発されたのは、兵庫県西宮市の「コウキ」と杉田光男元社長(54)。同社と元社長は2014年と16年、下請けとして関わった岩手県や宮城県の震災復興事業で架空の外注費を計上するなどして所得を圧縮して約7900万円を脱税した疑いがある。隠した所得約2億8800万円は、元社長が家族の旅行費など個人的な遊興費や知人への資金援助に使ったとみられる。

 朝日新聞が入手した取引資料や複数の関係者の証言によると、同社はこのほかにも同様の手口で1億円以上を作り、工事を受注するために復興工事関係者ら約5人に提供していたという。この1億円以上の収支は会計帳簿に記載されていないものの、会社のために使った経費とされて脱税の対象にならなかった。脱税対象となったものを含め、約4億円の裏金を作っていたことになる。

 コウキは、宮城県石巻市、気仙沼市、岩手県宮古市で津波のがれき処理工事や、福島県富岡町の廃棄物処理施設工事などで、ゼネコン各社のJVの下請けで廃棄物の破砕・選別処理をするプラント設置を受注。いずれの工事も復興増税などを主な原資とする国費によるものだった。

 東京商工リサーチによると、コウキの11年までの売上高は10億円前後で推移していたが、18年12月期の売上高は約31億円に伸びていた。同社は取材に、代理人弁護士を通じて「現時点ではお話しできない。コメントは控える」と回答した。(編集委員・市田隆、徳永猛城)