2020/10/22

【ココナラ 会長】ハードスキルだけでなくソフトスキルを生かす

南 章行
株式会社ココナラ 代表取締役会長
スキルシェアサービスの草分けとして圧倒的な存在感を放つ「ココナラ」。デザインやイラスト、キャリア相談など個人が得意とする多種多様なサービスが出品されている。その数は200種類・40万件以上におよび、登録会員数は170万人を超える。

「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」を経営ビジョンに掲げ、ココナラを拡大成長させてきたのが、運営会社ココナラの創業者で現会長の南章行氏だ。

大手銀行から企業買収ファンドに転身。英オックスフォード大学でMBAを取得し、2つのNPOの立ち上げに参画後、起業に至った南氏のキャリア、人生のストーリーを追いながら、個で生きる力を獲得するためのヒントとなる哲学を聞いた。(全7回)

銀行から企業買収ファンドに転身

企業再生を仕事にすると決意して、住友銀行(当時)に入行。だからといっていきなり企業再生の仕事ができるはずもなく、最初は支店に配属されました。
1999年、住友銀行(当時)の支店の仲間と
そこでは調査部にいくことを目指して成果を上げ、実際に調査部への異動を勝ちとりました。
希望がかなって配属された調査部では、担当業界の調査レポートの作成や、融資先の財務状況の格付けなどが基本業務で、時には経営危機に瀕した企業の再生プランの原案をつくることもありました。
ただ、当時はバブル崩壊後の銀行再編の最中にあり、どこも生き残ることに必死でした。僕は企業再生がやりたくて銀行を選んだのに、それどころではないというのが実情だったんです。
そこで、自分が本当にやりたいことをやるために、5年目で銀行を辞めて、アドバンテッジパートナーズ(AP)に転身しました。
2004年、AP時代
転職先のAPは、日本の企業買収ファンドの草分けで、買収だけでなく、経営にも携わり、企業の内側から再生を促す新しいビジネスをしている会社でした。
僕がAPに転職できたのは、奇跡のようなタイミングでした。APのメンバーは、東大卒、大手コンサルファーム出身、MBAホルダーといった人たちばかり。だけど、たまたま、若手のポテンシャル採用を始めるという話を耳にしてエントリーしたんです。
僕が入社した1年後には、ダイエーやカネボウの買収で一躍その名を知られるようになり、僕とは比べ物にならない優秀な人材が集まってきた。だから、1年前でも、1年後でも、僕は入社できなかったはずです。

圧倒的な実力の差を痛感

そんな環境に滑り込んだので、入社後はとにかく成果を出そうと必死でした。1年目の人事面談で「皆さんすごい方ばかりで学ばせてもらっています」と話したら、社長にこっぴどく叱責されました。
「君はこの業界で一番になる気概はないのか。そもそも君にはほかの人に負けない強みもない。今の姿勢のままでいるなら、辞めてもらうしかないよ」
そんなことを言われて、返す言葉もなかったですね。
南 章行(みなみ・あきゆき)/ココナラ 会長
1975年生まれ。愛知県名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、1999年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2004年に企業買収ファンドのパイオニアであるアドバンテッジパートナーズ入社。2009年に英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)修了。現地で出会った「音楽を使った若者向け社会起業プログラム」ブラストビートの日本法人(NPO)設立を主導したほか、オックスフォードの同期が設立したNPO法人「二枚目の名刺」の立ち上げにも参画し、個人の自立・自律をサポートする活動に積極的に参加。東日本大震災をきっかけに、2011年6月にアドバンテッジパートナーズを退社し、自ら代表としてウェルセルフ(現ココナラ)を設立。知識・スキル・経験のスキルマーケット「ココナラ」を運営している。一般社団法人シェアリングエコノミー協会理事。
ちょうど同じ頃、僕を奮い立たせる出来事がありました。