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緊急事態宣言や学校の一斉休校の効果は2割ほど?  外出自粛に最も影響を与えたのは…

「強制力のあるアメリカの外出禁止令であっても、強制力がないと言われている日本の緊急事態宣言であっても、直接、抑える効果はそんなに違いはない」と分科会の小林慶一郎氏は指摘する。


10回目の新型コロナウイルス対策専門家分科会後の記者会見で、専門家は東京大学の渡辺努教授、慶應義塾大学の藪友良教授が共同で発表した人々の外出自粛に関する研究データを紹介した。

このデータが示すのは、何が人々の行動変容に効果を発揮するのかということ。

研究を紐解くと、予想外の結果が見えてきた。

緊急事態宣言や学校の一斉休校の効果は2割ほど?

この研究はNTTドコモの東京のユーザーの位置情報を購入した上で、実施されたもの。

研究グループが「ステイアットホーム指数」を算出し、人々の外出自粛に何がどれだけ影響を及ぼしたのかを分析した。

ステイアットホーム指数は「外出者数 × 外出時間がコロナ前に比べてどれだけ減少しているか」によって導き出されている。

分析によると、1月から6月の間の行動変容の7割から8割が新規感染者数の情報や報道などの情報効果によるものであることがわかった。

緊急事態宣言や学校の一斉休校といった政策介入による直接効果は2割ほどとされている。

このデータをもとに作成された論文「⽇本の⾃発的ロックダウンに関する考察」の中で研究グループは「感染拡大に伴い国民の外出はコロナ前に比べて約32%減少したが、そのうち政府からの要請に伴う行動変容で説明されるのは12%ポイントだった」と発表。

その上で、「東京都の外出抑制のうち政府の要請が寄与したのは約4分の1であり、残りの約4分の3 は政府のアナウンスや日々発表される感染者数など,感染に関する新たな情報を受け取った都民が、感染のリスクをアップデートしたことによって生じた」としている。

「本稿の分析結果は,感染封じ込
めに必要なのは法的拘束力の強い措置ではなく、人々の行動変容を促す適切な情報の提供であることを示唆している」

研究グループはこのように結論づけている。

論文が示す、行動変容のために重要なこと

分科会の構成員、小林慶一郎氏はこのデータを踏まえ、「正しい情報をいかに国民にきちんと伝えるかで国民の行動が変わるということがグラフから読み取れる」とコメント。

また、論文の中では政策介入による直接効果は「同じくらい」であるとされているとし、「強制力のあるアメリカの外出禁止令であっても、強制力がないと言われている日本の緊急事態宣言であっても、直接、抑える効果はそんなに違いはない」とした。

尾身茂分科会会長はこのデータについて、「協調圧力とネガティブに語られることもあるけれども、健康意識のようなものが日本人は比較的高いということがあったのでは」と分析。

合わせて、「感染がある程度落ち着いている時は人の動きをそれほど抑止しなくても経済活動ができる」ということを裏付けているのではないかとの認識を示した。