米大統領選挙テレビ討論会 コロナ対策や経済対策で激しい論戦
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予想されたものの、討論というよりかは罵り合いに近く、その激しさに目が奪われがちでしたが、あえて1つ象徴的だった場面は人種差別への抗議が一部暴徒化している問題についての答え。
トランプ氏はこれは極左による仕業だとして「法と秩序」の必要性を訴え、加えてこれを放置すると「郊外が崩壊する」と発言。
それに対してバイデン氏は、郊外を痛めつけているのはコロナと気候変動の影響だと論点を暴動への対応から少しずらして答えました。
このやりとりからそれぞれの候補の狙いが見えてきます。
トランプ氏は、世論調査では劣勢となっている郊外での巻き返しを狙い、「民主党(=極左)が首長を務める都市での暴動が郊外にも及ぶ」との危機感を煽ろうとしたと思われます。
一方のバイデン氏の戦略はとにかくトランプ氏のコロナの対応を批判し、科学を無視したやり方のせいで犠牲者の数が増えたと強調すること。気候変動の影響を軽視しているとの批判も同じ流れとなります。
この選挙はviolence(暴力=暴動対応)対virus(ウイルス=コロナ対応)になるとはWSJのベテラン政治コメンテーターの言葉ですが、その一端が今日の討論会でも現れた形です。
その記事はこちら:暴力対ウイルス、トランプ・バイデンの「戦略的高地」
https://jp.wsj.com/articles/SB10557005316144304846804586603800102419350自分の支持者にどうアピールするかを考えて、瞬時に相手が嫌がる言葉を浴びせるトランプ氏の戦略は16年選挙の討論会以上。引きずられてバイデン側も似た対応。ほとんど議論が成立しなかった気もします。SNLのコメディスケッチのよう。トランプ氏が前のめりで言葉を遮り続ける分、危惧されていたバイデン氏の「反応の遅さ」も目立たなかった気がしました。各種政策はそれなりにふれたのですが、それぞれの支持層は「納得」できたのではないかと思います(もちろん、どちらの支持層も他方の候補者の言葉や態度に「怒っている」のかと思います)。ふれるまえに両者が言い合いになったため、議論されなかった政策の一つが、人工妊娠中絶の立場で、次回の討論会に残された大きな争点(カトリックのバイデンにとっては、人工妊娠中絶への立場は「踏み絵」)。コロナ禍で観客がいないというのも大きなポイントで、反応を待つ時間がないだけ、次の話題に行くのが早くなるほか、相手を攻撃する「捨て台詞」も出しやすくなっています。全体として「議論」には全くなっていなかったのですが、分極化時代の支持者向けの選挙動員の手法と考えれば、今回のようなののしり合いになる、といったら皮肉でしょうか。
どちらが優勢だったかは見る人の立場によって意見が大きく分かれる気がします。トランプ氏支持者はバイデン氏に攻撃を絶え間なく浴びせたトランプ氏が相手を論破した、と見るでしょうし、バイデン氏はトランプ氏の行儀をわきまえない攻撃にもかかわらずきちんと冷静に、笑顔を絶やさず聴衆に語りかけた、と見るでしょう。この討論会で流れが決まった(あるいは、変わった)ようには、私には見えませんでした。