国家財政を考えてみよう その15: 「消費税増税と法人税減税は企業優遇」は本当か?

過去30年税制変更の積み重ねでもっとも大きなものは、消費税導入とその増税に対して、法人税率の引き下げで、直間比率を是正するという建前が一般的な認識だと思います。

これに対して、企業優遇との批判が繰り返されますが、本当にそうか?とふと思って数字を見てみました。

主要税目の税収(一般会計分)の推移:財務省
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/011.htm

この資料によると、法人税収のピークは平成元年(1989年)の18兆円。資料上で最新の平成27年(2015年)では11兆円。企業負担は7兆円軽くなっています。

他方消費税導入前の昭和63年の物品税は2.2兆円、平成27年(2015年)の消費税は17.1兆円なので、14.9兆円増えています。

法人税が減った額の2倍もの額の消費税を消費者は取られていることになります。

では企業は本当に楽になったのか?というと実はそうではありません。

企業の賃上げ意欲を削ぐ社会保障負担
2017年3月24日ニッセイ基礎研究所 岡圭祐
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55326?pno=2&site=nli

上記図表2によると企業の社会保障負担は1994年から2015年までの20年間で17兆円から26兆円に9兆円増えています。

あれ?企業側にしてみれば、法人税が減った以上に社会保障負担が増えている。しかも法人税は儲かったら払うし儲からなければ減るのですが、社会保障費は企業の損益に関係なく負担しなければならない。

私も会社を経営したことがあるので実感しますが、その時期に社会保障費の企業負担率が毎年上がって、しかもリーマンショックや東関東大地震後の経営が苦しい時期で、儲からなくても増え続ける社会保障費負担に苦しんだ実感があります。儲かったら払う法人税のほうが経営者にとってよっぽど楽です。

賃金が上がらない上がらないというけれど、企業側から見れば社会保障費は人件費ですから、労働者への名目賃金は上がってなくても、実質賃金を上げているのと同じことです。社会保障費を人件費と認識せずに、税の変形だと捉えるなら、法人所得税が減った以上に社会保障費(税)が増えているのと同じこと。

個人は賃金が上がらず、消費税負担は増えている。しかし企業も税と社会保障費の負担総額では楽になっているどこらか負担は増えている。

他にも構成要素は沢山あって、上記のような単純な図式ではないはずですが、少なくとも単純な企業優遇ではないように思えます。

個人も企業も負担が増え続けている。それでも財政赤字も増え続けている。一体我々が負担しているお金はどこに消えちゃっているのでしょうか?

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