「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、自分や家族の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

認知症は「鼻」から始まる!? 認知症の意外な初期症状とは?Photo by Adobe Stock

料理の味付けがおかしくなったら、認知症を疑え

 年齢を重ねた方が、「最近、においがわからなくなった」と言い始めたら、医者は認知症を疑います。嗅覚は脳の一番原始的な感覚であり、嗅覚障害は認知症のごく初期にあらわれる症状だからです。

 認知症患者と健常者の嗅覚機能を比較した研究においても、認知症患者の嗅覚が低下していたことが明らかになっています。実際、認知症の人は鍋を焦がしたり、料理の味付けがおかしくなったりしがちですが、それも単なる注意力の欠如ではなく、鼻がにおわなくなっているためだろうといわれています。

 ちなみに、認知症とモノ忘れの違いは、ヒントがあると思い出せるのがモノ忘れ、思い出せないのが認知症です。たとえば「昨日食べた夕食は?」といわれて思い出せなくても、「ほら、中華料理のアレだよ」とか「ナスが入ってたよ」といわれて思い出せれば、単なるモノ忘れだといえます。それが、「昨日? 夕食食べたかな?」と、記憶が抜け落ちているのが認知症です。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長
1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。