[東京 24日 ロイター] - 日銀が7月14―15日に開いた金融政策決定会合では、新型コロナウイルスの感染拡大への政策対応について、資金繰り支援・円やドルの潤沢な供給・上場株式投信(ETF)などの積極購入の3本柱で引き続き企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが適当だとの認識を、大方の委員が共有していた。

24日に公表した議事要旨で明らかになった。ウィズ・コロナ時代の金融政策のあり方を検討すべきといった意見や、金融政策の企業経営への影響を点検すべきといった意見も出された。

日銀は7月の決定会合で大規模な金融緩和の現状維持を賛成多数で決めた。3月以降打ち出したコロナ対応の継続も決定した。[nL3N2EM0YC]

ある委員は「当面、景気の改善が緩やかなもとで資金繰りにはストレスがかかり続ける。金融市場も神経質な地合い続くとみられる」と強調した。1人の委員は「金融政策面の当面の最優先課題は、引き続き企業の資金繰り支援により、事業や雇用の維持に資することだ」と発言していた。

その上で委員は、当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加緩和を講じるとの認識で一致した。ある委員は、当面は政府や各国の中央銀行と緊密な情報共有を続けるとともに「既往の政策枠組みの十分性を見極め、政策対応が必要であれば迅速に実行することが重要だ」と述べた。

決定会合では、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、金融面の不均衡について議論した。委員は、コロナの影響もあり、金融機関収益の下押しが長期化すると金融仲介が停滞に向かうリスクがあるとの認識を共有した。1人の委員は「実質無利子貸出が一般の貸出の利ザヤ縮小圧力にもなり得る」と警戒感を示した。

委員は「利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある」との認識を共有。現時点で金融機関は充実した資本基盤を備えていることなどから、金融面のリスクは大きくないものの、先行きの動向は注視していく必要があるとの認識で一致した。

7月の決定会合では今後の金融政策運営のあり方についての意見が相次いだ。ある委員は「今回の危機の経験を踏まえ、ウィズ・コロナ時代の金融政策のあり方について検討を深めるべきだ」と主張。「経済を確実に回復軌道に乗せるためには、企業自身が成長戦略を立案・実行するマインドに早く戻す必要がある」(1人の委員)といった意見も出ていた。この委員は、中長期的な視点から金融政策が企業経営に与える影響についても、慎重に点検すべきだと述べた。

1人の委員は「2%の物価目標に向けた政策対応は、コロナの影響の収束が見えてきた段階で検討することが適切」との見方を示した。「財政政策との間だけでなく、ニューノーマルへの対応に向けた構造改革政策との間でも、それぞれの役割のもとで連携することが重要だ」(ある委員)といった指摘も出ていた。

<景気、回復への移行局面との声も>

7月の決定会合では「経済・物価の情勢」(展望リポート)についても議論した。今回の経済・物価見通しはおおむね前回の見通しの範囲内との見方で委員は一致した。

経済情勢について、1人の委員は「感染症を乗り越えるための構造変化には時間が掛かる。22年度においても、経済は感染拡大前の水準には戻らない」と厳しい認識を示した。複数の委員は「景気回復テンポが緩やかなもとで、見通し期間中に物価が2%に向けたモメンタムを取り戻す姿は想定しにくい」と述べた。

国内景気の足元の状況については、複数の委員が「厳しい感染症抑制策を受けて大きく落ち込んだ局面から、回復に向けての移行局面にフェーズが変化しているのではないか」と指摘した。

物価については、複数の委員が「家計や企業の中長期の予想物価上昇率は低下しているものの、下方屈折したとまでは言えない」と指摘。「基調的な物価指標も底堅く推移しており、デフレ的な価格設定行動は広がっていない」と述べた。一方、ある委員は「今年度もベアは確保されたものの小幅であり、感染症の影響が長引くとみられることを踏まえると、賃金にも当面下押し圧力が続く」と述べた。

為替市場について、ある委員は「このところ安定しているものの、取引高が低下するなど流動性が低下している点は気掛かりだ」と指摘していた。

*内容を追加します。

(和田崇彦)