ITリテラシーゼロ企業でも大丈夫 長野の老舗が「IT変革」に成功した理由

» 2020年09月23日 10時00分 公開
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 これまで「働き方改革」は、長期的な労働人口の減少を背景に、時には残業を減らすことに焦点が当てられ、時には生産性の向上や業務の効率化が叫ばれ、時には多様なワークライフバランスの実現による人材確保といった文脈で語られてきた。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で社会環境が大きく変わり、ウィズコロナ/アフターコロナの中で、いかに企業が存続や成長するために新しい働き方へ対応するかを迫られている。

 働き方改革はもはや、ビフォーコロナの単なる“先進企業の先進的な取り組み”ではなく、あらゆる企業に突き付けられた喫緊の課題だ。そしてウィズコロナでもある今、IT無しの働き方はあり得ないのも現状だ。「ITはよく分からない」「改革できるのは資金力のある大企業だけ」という言い訳は通用しない時代にもなっている。

「体質の古い老舗企業」のデジタル化への挑戦

株式会社カクイチの事業戦略部部長、鈴木琢己氏

 そこで参考にしたいのが、株式会社カクイチの取り組みだ。同社は1886年、銅鉄金物商の田中商店として創業。現在はガレージ・倉庫・物置事業、国内外での樹脂ホース事業などを展開する。創業134年の老舗でグループ従業員数は600名程の企業である。自らを「老舗ベンチャー企業」と位置付け、イノベーティブな発想でものづくりに取り組み続けているが、従業員の平均年齢が47歳とベテランぞろいのなか、決してITを得意とする企業ではない。同社執行役員で事業戦略部部長の鈴木氏は、「古い体質のローカル企業」と同社を紹介する。しかし、Slack、G Suite、Boxなどのクラウドの最新ITツールを積極的に導入し社内にIT変革をもたらし、多様な働き方と彼らの重要点でもある「スピード」を実現している。

 そんな古い体質かつITリテラシーが高いとはいえない同社が、どのように1年半で135年の間培ってきた社内の文化を大きく変革することができたのか。経営層が掲げるテーマは、「PDCAを早く回すためにもフロー型の組織にしよう」。フローとは、自分の持つスキルより少し難易度が高い面白い仕事に取り組むことで、夢中で楽しんで仕事ができる状態のことをいう。

カクイチが目指したフロー型組織

 そこで、まず2019年1月にチームコミュニケーションツール「Slack」と、従業員同士が感謝を送り合えるサービス「ユニポス」を導入。組織の壁を超えたコミュニケーションを実現した。一方、リアルなコミュニケーションの雑談やミーティングも大切にし、会議をほぼなくした。さらに、Googleの「G Suite」を導入し、日々の作業を“見える化”した。

変革によって“ポンコツ管理職”が露呈? リーダーの在り方とは?

 同社のようなトップダウンが効くオーナー系企業の場合、末端の従業員にまで情報が伝わらなかったり、間違った情報が共有されたりするという問題がある。そこで、コミュニケーションを改善するITツールの導入と同時期に、情報を持ち発信する人物が中心となるオープンネットワーク型組織へと変革させた。また、プロジェクトごとにメンバーを集める横断型のタスク型組織の要素も取り入れた。

 「Slackを導入し組織体制を変えたことで、工場と全国の営業所100拠点のコミュニケーションが非常に活発になりました。組織の壁がなくなり、組織を超えたネットワークを構築でき、コミュニケーションが改善されたことで、工場と現場の心理的距離がぐっと近づきました」。コミュニケーションが向上し、お互い気付かなかったことに気付くことによって、人間関係も業務効率も向上しました。

 一方、浮き上がったのがリーダーの在り方や管理職の変化の必要性だ。社長が発信した言葉が末端の従業員までダイレクトに伝わるようになったことで、情報統制で組織をコントロールするだけでは管理職の意味はなく、“ポンコツ管理職”になってしまう。ITというツールが変わり、働き方が変わることで「リーダーの在り方が変わった」と鈴木氏は考えている。

オープンネットワーク型組織への変革で、管理職(青丸)が情報発信の中心から追いやられた一方で、工場(赤丸)とのコミュニケーションが活発化し、現場との距離が近づいたという

 「情報で組織を統制していた管理職から、正しい情報を使って大きなビジョンを掲げ、部下を導くリーダー像が今のコミュニケーションスタイルおよびカクイチのビジネスに求められているのです」

 最新のITツールを導入し組織体制を変革した結果、ゆっくりとした組織がスピーディーになり効率がアップ。意思決定が加速し、組織間がオープンコミュニケーションになったことで、失敗や成功体験もスムーズに共有でき、新しい気付きやそれによるPDCAサイクルも回せるようになった。

 ところが、コミュニケーションは狙い通りになったのだが、今度はコミュニケーションのスピードに業務が追い付かないという問題が出てきた。もともと「ITリテラシーゼロ企業」なので、たくさんの紙があり、もちろんFAXや電話も現役。そこで、2019年5月に「全ての入り口をSlackにし、全てのファイルやデータはクラウドに置き、全ての業務はiPhoneで行えるようにする!」と宣言してしまった。後には引けない状況である。

 そんな中、鈴木氏は全国の営業パーソンが集まる年に一度の社内研修会で、ファイル共有もでき、ファイルやコンテンツをクラウドで管理活用できるBoxをひそかに採用した。何の説明や教育もせず、Boxのリンクを発行し社内へ資料共有してみた。すると、全く問題が起きなかったという。

 「『これはもしかしたら誰でも使えるのでは?』と思い、社長にも誰にも言わず勝手に何度もリンクを発行し続けました。別の社内研修会では、27拠点の営業所とBox上でプレゼンテーション資料のブラッシュアップを行ってみました。購入したBoxのライセンスは容量無制限なので、資料の容量やバージョン数を気にすることなく、スピーディーに複数のメンバーで資料を仕上げることができました」

何の説明もなく研修会の資料をBoxで共有したところ、全く問題が起きなかったことで導入を決定

工場や現場を持つ企業での「IT変革のポイント」

 利用が進むにつれ、特に現場と各拠点のコミュニケーションが増えたことで、「現場からの同じ質問が多い」「現場の仕様書が紙ベースなので、最新版が分かりづらい」「出先でも図面を見られるようにしたい」など、現場から要望や課題が出てくるようになった。

 そこで、「早速工場でもBoxを導入し、フォルダ設計をお願いしてみました。さすが普段から仕様書などのフローを作ることに長けている人たちです。私の想像以上に細かなフォルダ設計が来て、その瞬間『いける!』と思いました」。Boxはクラウドサービスで、かつ単なるクラウドストレージではなく、版管理や重複編集を防止するロックといったコンテンツ管理の機能を併せて持っているため、いつでもどこでも最新版の図面といったファイルをPCやiPhoneといったデバイスを問わず見られるため、工場から上がった課題や要望も容易にクリアできた。

 デジタルから最も遠い存在だった工場でのBox導入をきっかけに、急速に社内でBoxが普及した。今まで紙で共有していた仕様書や図面は、まるでシリコンバレーの企業のようにBoxでファイル共有され、Slackでコミュニケーションされるようになり、スマートフォンでいつでもどこでも確認できるようになった。

デジタル化から最も遠い工場でBox導入を開始。結果、急速に社内で広がっていった

 同社はコロナ禍以降、「コロナを味方にDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する」をミッションに、デジタル化をさらに加速。本社のFAXのコンセントをハサミで切り、本社の机を壊した。その結果、急速に紙を使う機会がなくなり、強制的なリモートワークが推進された。

 工場もデジタル化がさらに進んだ。マニュアルは工場の入り口にQRコードを貼り、スマートフォンで読み込む形に変更。今までホワイトボードで管理していた製造ラインの工事ボードはデジタル化し、Boxで管理するようにした。

 「工事ボードで使う見積書や契約書、施工仕様書、打ち合わせ議事録などは全てクラウド化し、外部の人とはリンクを発行して共有します。今までは営業が現場に行き、紙で現場の状況を書いて工場にFAXし、紙で発注していたもの。画期的な変革により業務はペーパーレス、そしてスピーディーかつ効率的になりました」

Boxをベースに工場ボードのペーパーレス化を実現

 その他にも、テレワークに対応するため、ホストサーバ上にあった数千のファイルをBox上に移動し、どこからでもファイルにアクセスできる環境をつくった。データをクラウド上での管理に替えたことで、業務効率は向上。それに伴い、サーバの維持管理コストは下がり、PCのデータバックアップ費用も削減できるなど、定量的に計れるコスト面でのメリットもあった。テレワークが実現したことで、当然ながら移動時間も削減できたという。何よりスピードを支えているのが、Boxだと感じていると鈴木氏は話す。

 「コロナ禍の今、必要なのはスピード感です。こんな『ITリテラシーゼロ企業』でもできたのだから、IT変革は簡単なことが証明されています」と鈴木氏。「ツールは導入すれば勝手に現場の人が使い始めます。後押しは要らない。便利なものは勝手に広がりますし、もし広がらなければやめればいい。インフラの再設計に時間を費やすくらいなら、出来上がったSaaSを『使う』。その導入プロセスを考える方がIT部門も楽しいのではないか?ひとまず、一番導入がスムーズそうなIT部門と一番デジタルから遠い工場のような部門、両極端の部署から導入してみてはいかがでしょうか」とDX推進のコツを語った。

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提供:株式会社Box Japan
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年11月5日