【濵野智成】なぜ「中国」は避けて通れない市場なのか

2020/9/25
「NewsPicks NewSchool」では、10月から中国市場攻略について徹底的に学び、ディスカッションするプロジェクト「ニューチャイナ・マーケティング」を開講します。プロジェクトリーダーを務めるのは、株式会社トレンドEXPRESS 代表取締役社長CEO・濵野智成氏です。

開講に先立ち、濱野氏に概要とプロジェクトへの思いを語ってもらいました。
【開講迫る】濵野智成、藤井保文らプロと学ぶ。Go Asia時代の「中国マーケット攻略法」

日本企業が勝てなくなってきた

濱野 このプロジェクトの開催背景として「日本はこの30年間で、世界で勝てなくなってきた」という現状があります。
これは世界の時価総額のランキング表ですが、30年前には50位以内に日本企業は32社ですが、現在は1社もランクインしておらず、やはり世界における日本の存在感は失われている状況です。
さらに、こうした中、日本では「人口減少」という深刻な課題が待っています。
その結果何が起こるかと言うと、日本だけで勝負ができない時代がやってきます。
すなわち内需だけではなく、外需を取り込むグローバルビジネスを展開することが必要になる時代が、すぐそこまで来ているのです。
その中で「これからのグローバル市場の主戦場はどこなのか」という議論になります。
今までは先進国中心、もっと言うと欧米中心でしたが、今後はまず中国が来て、そのあとインドが来るというようにアジア中心に変わっていくでしょう。
このように、今本当に大きなパラダイムシフトが起きようとしており、それはまさに1000年に一度の転換期と言ってもいいのではないかと思います。
では、このアジアの中で重要な国はどこかと言いますと、短期的にはやはり中国は欠かせません。
中長期的に見ると、インドや東南アジアの新興国も非常に重要ですが、直近の状況でいくと、中国はポスト・コロナ時代に突入し、いわゆる「リベンジ消費」が起きているように、新型コロナウイルス感染症の抑え込みに成功しているとも言われています。
さらに日本の視点で見ると、消費市場が約600兆円に達する中国は、欠かせない巨大市場であり、しかもコロナ禍の影響でインバウンド消費が激減しています。
しかし、チャネルはどんどん開かれてきており、今まで一般貿易でしか勝負できなかった日本企業にも、越境ECなどの形で中国消費をボーダーレスに取り込むチャンスが生まれている状況です。
濵野 智成/トレンドEXPRESS代表取締役社長CEO
大学卒業後、Deloitteに入社。 グループ最年少のシニアマネージャーとして、東京支社長、事業開発本部長を歴任。 その後、ビッグデータ&AIを事業とする株式会社ホットリンクに参画し、COO(最高執行責任者)として、グローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事等を管掌。 日本の人口縮小課題の解決と日本企業の世界での活躍推進をミッションに、株式会社トレンドEXPRESSを立ち上げて代表取締役社長に就任。 DNXVentures、日本郵政キャピタル、NTTDocomoベンチャーズなどから累計12.8億円を調達。 日本と中国を拠点に、クロスボーダーマーケティング&コマース事業を展開中。

中国市場は避けて通れない

こうした中で「中国市場は避けて通れない」と私はよく申し上げています。
この理由をいくつか述べたいと思いますが、1つ目が地政学的な状況です。2、3時間で行き来できる近い国に600兆円という世界最大の消費市場があるのは、非常に有利な立地です。
そして、中国と日本は同じ漢字を使う文化であり、食の文化も比較的近い。
あるいはスキンケアのブランドであれば、肌質が近いから、アパレルメーカーであれば、骨格が似ているからということで中国消費者から選ばれるかもしれません。
こうした文化や人種的な類似性も大きなチャンスだと言えると思います。
あとは統一された言語環境があるということも見逃せません。中国市場では1つの言語で14億人と相対できます。東南アジアでは、すべての国の言語対応やローカル対応が必要です。
ではその中で、日本のチャンスはあるのかということですが、たとえば「ダブルイレブン」と呼ばれる「独身の日」(11月11日)のEC商戦がアリババ(阿里巴巴/Alibaba)を中心に展開されていますが、今のところ3、4年連続で日本が国別ランキング1位になっています。
しかし、その一方で競争も激化し、今のままでは日本ブランドも勝ちづらくなってきている状況にあります。
日本ブランドはこれから世界に出ていかなければなりません。
チャンスが数多くある一方、リスクも大きな中国市場における成功法則を抽出するために、このプロジェクトでは私が持っている知見をアウトプットするだけでなく、皆様と一緒に意見を交換していければと思っています。
(写真:istock.com)

ターゲットインサイト

われわれの特徴は、中国のメディアのネットワークに加え、インフルエンサーや流通、消費者との多様なネットワークを持っていることです。
これらをつないでいくことによってニッチなビジネスプラットフォームを作ろうと考えており、日本のブランドが中国で勝つために欠かせないインフラになることを目指して事業を行っています。
今回のプロジェクトでは、いわゆる中国マーケティングにおける成功のフレームワークや事例、メソッドといったものを紹介したり、実際に中国マーケティングに取り組んでいる現場の方に話を聞きます。
たとえば、資生堂や、最近元気の良いBAKE(東京都港区)というお菓子屋さんなど、最近ではさまざまな会社が中国で成功を収めています。
そういう方々にゲストとして登壇していただき、中国におけるマーケティングについて語り合い、皆様からの質問にもお答えし、インタラクティブにセッションを進めていきたいと思います。
最初は中国マーケティングの概論をお話ししますが、それ以外にも、たとえばターゲットインサイトをどのようにつかんでいくのか、また顧客接点とターゲットのカスタマージャーニーを発掘しながら、展開していくサービスやプロダクト(が成功するにはどうしたらいいのか)、実際に中国市場でどんな事業にチャンスがあるのか、ということをアウトプットしていく場を作っていきます。
さらには、自社のブランドの成長ストーリーや戦略策定をアウトプットし、最終的には、どんな商品でどのようなマーケティングプランを作れば中国市場でうまくいくのかをテーマに、各グループに分かれて具体的なブランド戦略やマーケティングプランを作っていただきます。
最後にそれをプレゼンしていただきながら、「これならうまくいきそうだ」とか「成功の法則はこんなところにあるのではないか」ということを、皆様とディスカッションしていきたいと思います。
(写真:istock.com)

チームの力を活かす

今回、われわれがこれまで300社以上を支援してきた中で、中国向けのマーケティングの先進事例、そのメソッドを紹介していきます。
インタラクティブにセッションを進めていきますので、皆様が私にお聞きしたいこと、たとえば最近はやっている「拼多多(ピンドゥオドゥオ/Pinduoduo)」というECアプリの成功要因は何だったのか、あるいは「抖音(ドウイン/Douyin)」、その海外版である「TikTok」が今問題になっていますが、今後の勝ち筋は何かなど、最新事例をお話しすることができるかと思います。
もしくは中国で今「跳ねて」いるアプリやサービスは何かということもあるかもしれませんし、これから到来する5G時代はどうなるのかという話題もあるかもしれません。
それ以外にも、日本のブランドが中国で勝つためにはどうしたらいいのかという論点についても、皆様と一緒に考えていけたらと思っております。
今回のプロジェクトでは有識者の方々、あるいは実際に中国市場で闘っていらっしゃる方々をお招きし、その知見を皆様にどんどん還元していきたいと考えています。
さらには、マーケティングプランをしっかり策定することと、今回このプロジェクトに参加いただいた方々および登壇していただく方々などとのネットワーキングを大きな目的にしております。
1人や1社という単独の力では、なかなか中国で勝てないので、チームの力をしっかり生かしていくために、ネットワーキングを行っていければと思います。
※続きは明日掲載します。
(構成:加賀谷貢樹、デザイン:九喜洋介)
【濵野智成】14億人を相手にする中国マーケティングの原則
【濵野智成】中国マーケティングの勝機は「口コミ」にあり
「NewsPicks NewSchool」では、10月から「ニューチャイナ・マーケティング」を開講します。詳細はこちらをご確認ください。