プレミアム会員限定の記事です
今すぐ無料トライアルで続きを読もう。
オリジナル記事 7,500本以上が読み放題
オリジナル動画 350本以上が見放題
The Wall Street Journal 日本版が読み放題
JobPicks すべての職業経験談が読み放題
コメント
注目のコメント
これは米国の特殊事情で、「人種(race)」という特殊なシステムが米国社会の基本になっているためです。米国で生活する人間は全ていずれかの「人種」に分類され、白人、黒人、アジア人、ヒスパニック、といった立場を常に意識して生きていかねばなりません。「人種」は権益でもあり、米国に生きる人々は、全て自分の「人種」にふさわしい行動をすること、自分の「人種」の権益を守ることが求められます。他の「人種」の文化を経済的に活用することは他の「人種」の権益への侵害であり、「文化の盗用」と呼ばれて糾弾されます。
ヨーロッパでは、この米国の「人種」システムは共有されていません。米国独特の特殊なシステムです。ロシアでも中国でもインドでも、「文化の盗用」が「人種の権益」を侵害する、といったことは問題になりません。そもそも、その前提となる米国特有のシステムが存在していません。米国という、巨大な奴隷制を持ち、一方で人権思想を高らかに掲げてきた国の歪な歴史が無理矢理ひねり出さざるをえなかった特殊なシステムです。
日本でも、米国のリベラル大学教員などの真似をするのが進んでいる、と思い込んでいる人たちが、同じような「文化の盗用狩り」を試みていますが、日本人にはまずピンとこない話だし、米国とは社会の前提がまるで違います。
ヨーロッパ人は、文化というのは、1000年以上かけて、数多くの民族や宗教が入り混じってできているもので、これまでも今後もさらに変動していくものであることを知っているので、「人種の権益である文化を盗用している」というようなことを米国人が言っても相手にしません。米国のリベラル知識人の言うことをありがたがるヨーロッパ人もいません。
当たり前ですが、日本人もヨーロッパらしき場所を舞台にしたアニメをつくるし、ナポリタンのような変なイタリア料理をつくります。そこには誤解も偏見もあります。欧米で『ラスト・サムライ』のような時代考証が変な映画や変な創作スシがつくられたりもしますが、文化とはそうやってできていくもので、グローバル化にも理解にも交流にも必要なことです。原稿が届いて、ただ驚かされました。
とはいえ、米国にいると、確かにコロナからワクチン、マスク、エンタメにスポーツまであらゆるトピックが政治化して、すべてにおいて両極が激しく応酬を繰り広げています。
これまで、日本のコンテンツというのは、政府主導での輸出というよりは、欧米で「発掘」される形で、英語圏のインターネットを中心に広がって、その独特の美学が徐々に人気を集めてきました。
ですが、逆にいえば、この2020年においては、日本にいる作り手の知らないところで政治化して、分断の新たなフロンティアとして消化されることにつながります。「たかがゲーム・アニメ内の話だから」といった議論は、ますます(国外では)受け入れられなくなるのでしょう。
日本のコンテンツの海外展開に詳しいジャーナリスト、パトリック・セント・ミシェル氏の寄稿をぜひご覧ください。意図しない解釈のされ方もあることを前提に、コンテンツや情報発信をしなければならない。特に分断社会では。この寄稿を読んでそう思いました。
しかし、八方美人では誰も感動しない。この微妙な味付けが難しいところです。
この記事の著者 / 編集者
この記事に関連するユーザー
新着オリジナル記事
- 1190Picks