【細谷雄一】「菅外交」に何が求められるのか?
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、外交史。北海道大学法学部専任講師、敬愛大学国際学部専任講師を経て現職。著書に『戦後国際秩序とイギリス外交』『倫理的な戦争』『戦後史の解放(Ⅰ・Ⅱ)』など。
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20世紀に日本で最も「外交手腕」があったのは、吉田茂首相ではないでしょうか。敗戦後にマッカーサーを相手に卑屈にもなり、ハッタリも使って可能な限り日本人の利益を守ろうとしました。しかし、世界を主導するような外交手腕を示した日本人、というのは日本史上に見当たりません。
20世紀の代表的なところでは、ソ連と中国の対立を利用として中国を引き込み、ベトナム戦争を終結させた米国のキッシンジャー国務長官でしょう。ソ連と対立して孤立しかねなかった中国で、米国と取引し、「アジア・アフリカの友」という国際的イメージを演出した周恩来も加えられるでしょう。あとは、ソ連の弱体化とヨーロッパ統合の機運を理由して、東西ドイツの統合を米国に認めさせたドイツのゲンシャー首相でしょう。
我が国はこういう国だから、これらの国とは同盟し、これらの国には批判的な姿勢をとる、という論理的一貫性が無いと、外からはわかりにくいです。論理的一貫性にはトップダウンで方針がまず示されることが必要です。日本社会は、ボトムアップで、部局ごとの要望をすり合わせて最終決定になるので、そこに論理的一貫性は見いだせず、外からは何を考えているかわかりません。
日本政府の決定も、「省益」に基づく要望と、経団連などの要望をすり合わせたものです。外務省の中でも部局ごとの要望があり、米国を代弁する部局、中国を代弁する部局、ロシアを代弁する部局、などが要望を出し、すり合わせることになります。
トップダウンで世界に対する戦略を指示するというのは、日本人には向かないスタイルです。トップダウンの外交方針が日本で示されるようになったのは、橋本内閣の「ユーラシア外交」、麻生内閣の「自由と繁栄の弧」と続きますが、「福田ドクトリン」も東南アジア限定とはいえ、意義は大きかったです。いずれも、東アジアで米国の外交方針を補完するのが主な役割でした。
今、米国と中国の対立機運が高まり、ロシアやイランは中国につく、というように、対立軸が固まりつつあります。ここで、双方仲良くしましょう、のようなことを言うだけでは、ほとんど相手にされないでしょう。中国は、日本を自陣営に取り込める可能性もあると見ているでしょう。「外交手腕」というなら、ここで明確で一貫した方針を示し、それに基づいて外務省をはじめとするリソースを動員できるか、が手腕の有無の評価基準でしょう。
パブリックディプロマシーの欠如については深く同意します。韓国の文脈で触れられていますが、全体的にパブリックディプロマシーは弱い。
いったん、外国メディアで本来とは違う趣旨で報じられてしまい、あとから打ち消すような資料をだしたとしても、それを見た上で報道を修正するメディアはほとんどない。そのため、最初のうちだしから非常に重要になります。これは日本へのネガティブな反応への対応だけでなく、あるいは、それよりも、プラス面でどのような貢献をしているかといったイメージ作りや事実を伝えていくという意味でも重要です。
また、安倍政権による外交に対する評価は当然様々ありますので、歴史の判断が必要になりますが、1つ言えることは外交は一定の期間政権が続かなければまともな外交ができないということは確かです。
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」についてはこちらにコメントをしました。
https://newspicks.com/news/5184356
非常によく安倍外交を総括した。
すでに高いレベルまで上がった安倍外交を乗り越え、さらに新しい高さのある外交まで向上していくこと自体は難しいだろう。
今日の外交上の困難は安倍さんの2012年よりずっと複雑。
とくに中米の対立はあまりにも厳しく、日本は日米同盟の立場に立ち、とても中国には理解、同情する余地が少ない。
経済上ではこれ以上のアメリカ依存ができないし、さらにこれ以上の中国との関係を緊密にすることもできなく、
しかし、中米との関係を維持したい、となると、
経済以外にあまり安全保障が得意としない日本は何ができるだろうか。
菅外交の難しさはここにもある。
全世界を見てみると、
かなり自国第一になっている。
ちょうど今から内向きにシフトしてもいい。
はじめから外交を期待しないことも一つの方法。
菅さんはこの道を選び、歩んでいくのもけっして悪くない。
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