【完全解説】ベラルーシで今、何が起きているのか
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国際関係で見ると、ロシアは、ベラルーシは自分の勢力圏であると見ています。ベラルーシは、ロシアが自腹を切って何十年も経済を維持してやってきた自国の庭です。
ロシアはソ連時代の勢力圏を失ってきました。リトアニア、エストニア、ラトビアのバルト3国は完全にヨーロッパ側に入りました。ロシア人の兄弟民族の国であるウクライナでさえ、ロシアが軍事的に制圧した一部地域を除き、ほとんどヨーロッパ側に入りました。これらの国の人々が、ロシア側に入るか、ヨーロッパ側に入るかは、各国の国民が自分たちで決めていることですが、ロシアとしては、「米国とヨーロッパに勢力圏を奪われた」という被害意識を持っています。
ロシアが勢力圏を失っているのは、経済力を失っているからです。ソ連崩壊後、ひたすら石油と天然ガスに依存するのみで、2013年からはGDPは減り続けてきました。バルト3国にしてもウクライナにしても、ロシアの勢力下でいることのうま味は減りました。
ベラルーシのルカシェンコ大統領の統治はコルホーズ(ソ連の社会主義的集団農場)体制といわれます。ソ連式の生産体制や福祉を維持しながら、26年間の政権を維持してきました。しかし、ソ連式生産体制でつくられた家電製品やトラクターに国際的競争力があるはずはなく、つまりは補助金で生かされている産業です。補助金を出しているのはロシアでしたが、経済的に苦しいロシアは、もはや人口940万人のベラルーシさえ養いかねています。
ベラルーシが「ヨーロッパ最後の独裁国家」などといわれるのは、ベラルーシ人もヨーロッパ側も、「ベラルーシはヨーロッパ」という意識が多少はあるからです。旧ソ連でも、はるかに抑圧的な体制であるウズベキスタンやトルクメニスタンは、誰もヨーロッパとは思わないし、EUに加盟する可能性があるとも思えません。
ベラルーシで体制変換を図る人々にとっては、ソ連的な経済体制を廃止して豊かになれるのか、そのためにヨーロッパ諸国はどれだけのことをしてくれるのか、が国民の支持を得る決定的なポイントでしょう。しかし、「ヨーロッパに入ろう」と呼びかけることはロシアの被害者意識を刺激し、金は無くても軍事力は保っているロシアが介入してくるきっかけになります。ロシアを刺激しないよう、妥協的な体制移行という線も探られてきたでしょうが、対立の激化でその線も失われています。毎週のように抗議デモが続き、市民が弾圧されているベラルーシ情勢。小泉悠氏による本寄稿は、現時点で日本語で読めるものとしては、最も詳細に書かれてかかれているものの一つだと思います。
旧ソ連の国家はある程度似通ったところがありますが、一国の威を借りて独裁体制を敷くと、その国家からはしごを外されたときに窮地に陥る(その過程で、焦った独裁者が反対派を弾圧し始める)。そんな構図が見て取れます。
依存先が一つになると、変化に弱い。これは国も個人も同じではないでしょうか。小泉さんの分析&解説は必見。ベラルーシ・・・?と思ってしまう方もいるかもしれませんが、(ロシアからみて)周辺で動いていることだからこそ、ど真ん中が見えてくるという事例として考えると大変興味深いです。ミクロとマクロ、中央と周辺。この両方を反復してこそみえてくる本質があり、ベラルーシ情勢に限らず、他の国や産業セクターを見る上でも参考になる考え方が背景に見えます。
なお、ベラルーシはIT産業の成長が著しい国としても知られています。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/37516
以前、ウクライナのミニ特集を組みましたが、ロシアとの関係に大きく影響を受けています。旧ソ連邦のうち、軍事関連で強い産業をもっていた国は、現在はIT・ソフトエア産業が強い傾向にあります。
すごい人材の宝庫ウクライナ。日本人起業家が注ぐ熱い視線
https://newspicks.com/news/3644307
【現地レポ】なぜウクライナが優秀なテック人材を生み出したのか
https://newspicks.com/news/3645730