[東京 18日 ロイター] - 7月31日に開催された東芝<6502.T>の定時株主総会の前に、経済産業省が海外の複数の株主に接触していたことが分かった。事情に詳しい3人の関係者が17日、明らかにした。少なくとも株主の1人は、議決権の行使に影響を与える意図があったと受け止めている。東芝の株主総会では一部の議決権が反映されなかったことも判明しており、東芝のガバナンスに対する疑義が高まる可能性がある。

関係者によると、経産省の幹部らが、少なくとも3つの投資ファンドに接触。東芝の株主総会での議決権行使を巡り、他の株主と協議していないかどうかを探ろうとしたという。

特に経産省が関心を寄せていたのは、独自の取締役候補者の選任を提案していた筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントとの関係だった。連絡を受けたあるファンドは、東芝の提案を支持するよう促されたと解釈した。いずれの関係者も、非公表の情報として匿名を条件にロイターの取材に応じた。

機関投資家が他の投資家と協働して投資先企業との対話を行うことは、「集団的エンゲージメント」、または「協働対話」と呼ばれ、機関投資家の行動規範とされるスチュワードシップ・コードにも、そうした行動が「有益な場合もあり得る」と記されている。一方、他の投資家と共同で株主総会議案の賛否など株主の権利を行使することに「合意」した場合は「共同保有者」とみなされ、合算した株式保有割合が一定数を超えた場合には大量保有報告書を提出し開示しないと処罰の対象になる。

ただ、国内外の機関投資家の間では、どの線を超えると「合意」とみなされるのか当局の裁量に頼る部分が大きいとして、一層の明確化を求める声がスチュワードシップ・コード導入時から上がっていた。

別の関係者によると、経産省は昨年にも、東芝株主の米キングストリート・キャピタル・マネジメントが取締役の過半数入れ替えを要求した際、複数の海外ファンドに接触し、調査に入る可能性をにおわせた。

会社役員育成機構(BDTI)代表理事でガバナンスの専門家、ニコラス・ベネシュは、スチュワードシップ・コード策定でモデルとなった英国では、違法にはならない範囲を明確化した基準があると指摘。日本も「なぜ同様の基準を設けないのか」と語った。

経産省はロイターに対し、「うわさについてはコメントしない」と回答した。エフィッシモはコメントできないとし、東芝の広報担当者は「憶測にはコメントしない」としている。

東芝の株主総会を巡っては、事前に郵送された約1300通の議決権行使書が期限に間に合わなかったとして、結果に反映されていなかったことがロイターの取材で分かっている。

(山崎牧子 梅川崇 編集翻訳:平田紀之)