2020/9/19

【深層】コロナの新システム「ハーシス」が、残念すぎる

NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト

1週間で「ミッション完了」?

「もう止めようよ…。手書きの発生届…」
4月23日、ある医師のそんなTwitterでのつぶやきが、新型コロナの「発生届」の画像とともに投稿された。
これは、感染者が発生した際、医療機関から保健所に報告するための「用紙」だ。医療機関がこの用紙に手書きで記入し、FAXで保健所に送っていることはこの頃、すでにメディアでも報じられ、話題になっていた。
「担当は平副大臣かなぁ」
河野太郎防衛相(当時)が同日、そのツイートを、IT担当の平将明副内閣相(当時)宛てにリツイート。平氏は「引き取ります」と即答した。
わずか1週間後の4月30日。厚生労働省は、手書きFAXではなく、オンラインで発生届ができる新システムを5月中に稼働させることを都道府県などに連絡。
平氏も「大臣、ミッション完了!」と胸を張って河野氏にツイート報告した。そのスピーディな対応に、称賛の声も上がった。
もっともこれ、よくよく調べてみると、システム開発を受注したパーソルプロセス&テクノロジー(本社・東京都江東区)と政府との間で契約が結ばれたのは、Twitterでの最初のやりとりがあった、4月23日当日のことである。
同社は、コロナ感染者と濃厚接触した可能性を通知するアプリ「COCOA(ココア)」の開発も受注している企業ではある。
「COCOA(ココア)」の開発を手掛けた企業が、HER-SYS(ハーシス)も開発した(写真:時事通信フォト)
そうだとしても、政府の事業で、検討を開始した「その日」のうちに、契約にこぎ着けるのは不可能だろう。迅速さは、単にネット上での演出だった感は否めない。
問題は、そこに演出があったことばかりではない。そもそも、全く使い物になっていないことにある。

喧伝された「メリット」