米国の半導体メーカー、エヌビディア(Nvidia)は今月13日、スマホ用CPUの基本設計で世界に独占的な地位を占める英アーム(ARM)をソフトバンクグループから買収することで合意した。買収額は約400億ドル(4兆円以上)で、その一分として渡される株式によってソフトバンクはエヌビディアの大株主となる。
ただし買収成立は米中など各国規制当局の認可待ちだが、仮にゴーサインが出ればエヌビディアは今後、世界のIT業界でGAFAに匹敵するほど、大きな存在となっていくことが予想される。
スマホの9割以上が採用
エヌビディアもアームも「スマホ」や「ゲーム機」のようなコンシューマ製品ではなく、それらに内臓される半導体部品のメーカーであるだけに、私たちには普段あまりなじみのない企業かもしれない。が、彼らは世界のIT業界に隠然たる影響力を有している。
両社は役割分担が確立された近年の半導体業界において、製品の製造ではなく設計に徹した「ファブレス(工場を持たないメーカー)」という業種に分類される。
1993年、カリフォルニア州サンタクララに設立されたエヌビディアは当初、ビデオゲーム端末の画像処理を高速化する「GPU(Graphics Processing Unit)」と呼ばれる専用チップで半導体業界における地歩を固めていった。
やがて2006年頃から、このGPUが先端AI「ディープラーニング」の処理に適していることが判明。折からのAIブームに乗ってエヌビディアは急成長を遂げた。その時価総額は今や3000億ドル(30兆円以上)を超え、あのインテルをも追い抜いた。
一方、1990年、イングランドのケンブリッジに設立されたアームは、ライセンス事業を生業とする特殊なメーカーだ。彼らは「命令セット・アーキテクチャ」と呼ばれるCPUの基本仕様(命令体系)を設計し、これをアップルやクアルコムなど他のファブレス業者にライセンス提供している。
アームの命令セット・アーキテクチャは「アーム・アーキテクチャ」と呼ばれ、アイフォーンやアンドロイド端末など世界で販売されるスマホの9割以上がこの「アーム・アーキテクチャ」を採用している。言わばアームは「モバイル時代のインテル」とでも呼ぶべき存在だ。
世界に出回るパソコンの大半にはインテル製、ないしはそれと互換性のある「x86」アーキテクチャのCPUが搭載されている。これと同様、世界に出回るスマホの大半には、アーム・アーキテクチャのCPUが搭載されていると見て構わない。