[フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は10日の定例理事会で主要な政策変更を見送った。景気回復が勢いを失い、ユーロ高がインフレ期待を弱めていることから、刺激策を今後拡大するとみられる。

理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。

<PEPP>

パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)については、現在の状況の下、当該政策を展開する目的で全額利用される可能性が高い。   

<ユーロ>

ユーロについて話し合ったが、ご存じのようにわれわれは価格を目標としていない。

<下向きリスク>

全体的に、ユーロ圏の成長見通しに対するリスクバランスは引き続き下向きにあると考えられる。この評価は新型コロナウイルス禍による経済・金融面での影響がまだ不確実であることを大きく反映している。

<不確実性の高まり>

経済見通しを巡る不透明感の高まりが、個人消費や企業投資を圧迫し続けている。 

<弱い価格圧力>

需要の低迷や労働市場の著しいスラック(緩み)の中で、エネルギー価格の下落と弱い価格圧力により総合インフレ率は抑制されている。

<潤沢な刺激策が必要>

景気回復を支え、中期的な物価安定を確保するため、潤沢な金融刺激策が引き続き必要とされる。

<為替相場>

外国為替相場、およびユーロの上昇について、これまでの文書に言及はなかった。これは明らかにECBが(為替相場を)目標としていないことを示している。ただ、ユーロ相場の上昇はユーロ圏のインフレ率に影響を及ぼすため、ECBは注意深く見守っている。

これまでも述べた通り、(為替相場は)ECBの政策目標ではない。ユーロ相場の水準についてコメントしない。ただ、ユーロの対外価値がユーロ圏の物価の重要な決定要因であることは明らかだ。このため、ECBは注意深く見守る。

<ECBの戦略見直し>

米連邦準備理事会(FRB)が抱える2つの責務が再考されたことについて、われわれは明確に指摘した。ECBもFRBと同様に戦略の見直しに着手した。新型コロナウイルス感染拡大に起因する危機のピーク時に戦略見直しは中断されたが、近く再開される。あらゆる面での見直しを実施する用意がある。焦点は明らかに物価安定の定義だ。物価安定はあらゆる中央銀行の戦略の中核であり、ECBはこれに極めて注意深く焦点を当てる。

<サービスセクターは鈍化>

製造業セクターの活動は改善を続けているが、サービスセクターの勢いは足元で幾分鈍化している。

<全額を再投資>

資産買い入れプログラム(APP)の下で購入した満期を迎える有価証券の元本償還分は引き続き長期にわたり全額再投資する予定だ。ECBによる利上げ開始後も、好ましい流動性と十分な緩和状態を維持するために必要な限り行われる。

<為替レート>

不確実性が高まっている現在の環境下で、理事会は中期的なインフレ見通しへの影響を考慮して、為替レートの動向を含む今後の情報を慎重に評価していく。

<著しい不確実性>

回復の力強さは、パンデミックの今後の展開と封じ込め措置の成功に引き続き大きく依存しており、依然として著しい不確実性が散見される。

<力強い回復>

7月の前回理事会以降の経済指標は、おおむね従来の想定に沿った経済活動の力強い回復を示唆している。

<デフレリスクの後退>

近く公表される9月の経済見通しでは、明らかにデフレリスクの予測はない。一つの統計、もしくは1カ月のみデフレに向かっているというマイナスの結果だけで結論付けるのは望ましい経済分析ではない。

6月の見通しでやや高まっていたデフレリスクは9月に後退した。

<ユーロ高>

われわれの責務は物価の安定だ。ユーロ高が物価に負の圧力をもたらずほどなら、注意深く監視しなければならないことは明らかで、理事会でもこのことについて幅広く議論した。

<短期的な物価圧力>

短期的には、需要の低迷や賃金の低下圧力、ユーロ高を背景に物価圧力は引き続き抑制される見通し。ただし、供給の制約に伴い一定の物価上昇圧力は存在する。

<英国の欧州連合(EU)離脱>

ECBが見通しに織り込んだ(英EU離脱に起因する)下方リスクが悪化しないよう、英国とEUの交渉がここ数日間見られている状況にもかかわらず、前向きな結果につながることを望んでいる。

<あらゆる政策手段を利用>

状況により必要になり、かつ正当化される場合、ECBが担う責務と整合性を取り、理事会は利用可能なあらゆる政策手段を利用すると、改めて述べておきたい。ECBは躊躇なく、必要に応じて適切に政策手段を利用する。