総裁選

本格政権へ意欲にじむ菅氏 課題は派閥との距離

会見に臨む菅義偉官房長官=10日午後、首相官邸(春名中撮影)
会見に臨む菅義偉官房長官=10日午後、首相官邸(春名中撮影)

 自民党総裁選で優位に立つ菅義偉官房長官は、5派閥の支持を受けながらも「無派閥」を強調している。本格政権への意欲もにじませるが、辞任を表明した安倍晋三首相の残りの任期が切れる1年後の総裁選を見据え、菅氏が各派にすり寄ればイメージダウンを招きかねず、派閥との距離の取り方が課題となる。

 「現場の声を聞きながら政治をすることが、いかに大事かを分かっている」

 菅氏は10日、自身の事務所で党所属の地方議員とオンラインで意見を交わし、こうアピールした。国会議員票で優勢を保ちながら、地方票の獲得にも余念がないのは、「圧倒的な地方票を得ることが政権運営の安定につながる」(陣営関係者)と考えるからだ。

 安倍首相の突然の辞任表明を受けた総裁選のため、菅氏に対しては当初、「ワンポイント」との見方もあった。だが、選挙戦では、肥大化した厚生労働省の再編やIT政策の司令塔となる「デジタル庁」の創設に意欲を見せるなど、長期政権を視野に入れた発言も目立つ。「短期政権が前提では足元を見られる」(党幹部)との懸念もある。

 菅氏は新政権の陣容について「改革意欲のある人を優先して考える」と派閥の推薦を受けない意向を示す。しかし、党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)な菅氏が総裁選の流れを引き寄せたのは、最大派閥の細田派など5派の支援を受けるからに他ならない。

 5派の中には、細田派の稲田朋美幹事長代行、麻生派の河野太郎防衛相、竹下派の茂木敏充外相ら総裁候補を抱える派閥も多い。人事で派閥を冷遇すれば、来年秋の総裁選でしっぺ返しを食らわされる可能性もある。菅氏を後押しする派閥の幹部は「今回は今回、来年は来年」と菅氏の出方を見定める考えだ。(力武崇樹)

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