観光客の姿が少ない三年坂周辺(8月1日、京都市東山区)

観光客の姿が少ない三年坂周辺(8月1日、京都市東山区)

今夏、マスクに代わって口元を隠せるとして人気をじわりと集めた扇子(京都市下京区・大西常商店)

今夏、マスクに代わって口元を隠せるとして人気をじわりと集めた扇子(京都市下京区・大西常商店)

 今年の夏は夏休みを利用した帰省や旅行を多くの人が見合わせ、消費は例年と大きく変わった。京都と滋賀でも外出自粛やイベント中止の影響が宿泊、飲食、交通などに及ぶ一方、自宅で過ごす「巣ごもり需要」は引き続き堅調。感染対策グッズとして扇子も注目されるなど、業界の明暗が分かれた。異例の夏を振り返る。

 新型コロナウイルスの感染者が再拡大する中で迎えた夏は、旅行客や帰省客で混み合う観光地や主要駅の風景を様変わりさせた。

 旅行客の消失に苦しむ宿泊施設などを支援するため、7月下旬に政府が始めたキャンペーン「Go To トラベル」。観光業界は国内の需要喚起に期待したが、京都市内では効果は限定的だ。市内の大手ホテルは8月の稼働率が20%台にとどまる見込みで「目立った動きはない」という。

 市内の老舗旅館も「『Go To』効果はほとんどない」とする。例年予約で埋まるお盆期間は3分の1が稼働しただけで、規模を大幅縮小した五山送り火の16日は宿泊が2組だった。

 対照的に人気を集めたのが、屋外で楽しめるキャンプだ。滋賀・伊吹山の麓にある米原市のグランピング施設は、関西一円から家族連れが連日訪れ、8月はほぼ満室が続いた。運営する奥伊吹観光は「屋外で1棟ずつ離れているため喜ばれている」。森林公園のキャンプ場「スチールの森京都」(南丹市)も、40区画の稼働率が8月は休日を中心に9割に達した。

 帰省など遠方への移動縮小も顕著で、鉄道利用は大きく落ち込んだ。JR東海によると、お盆期間の7~17日に東海道新幹線を利用した人は前年比24%、JR西日本の在来線特急は同25%と、いずれも前年の4分の1にとどまった。京都駅の近距離利用者は前年の44%で半減した。

 季節需要も一変した。各地で花火大会が中止され、大型打ち上げ花火を製造する柿木花火工業(長浜市)は、予定していた数千万円の売り上げが消失。柿木博幸社長は「存続が問われる事態」と危機感をあらわにしつつ、需要が伸びつつある少人数のパーティー用など個人向けの打ち上げ花火に活路を見いだす。

 コロナ禍で消えた夏祭りは、浴衣にも及んだ。百貨店は商戦が始まる4月が感染「第1波」と重なり、京都高島屋(京都市下京区)は「販売機会を失い、非常に厳しい結果となった」。製造業者も苦戦したが、首都圏ではテレワークの装いで浴衣が人気を集め、呉服製造卸の藤井絞(中京区)は「自宅用の『おうち着物』を提案する」(藤井浩一社長)と希望をつなぐ。