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8月28日、政府が「2021年前半までに国民全員分のワクチンを確保する」と方針を出したとき、えーっと思いました。現在有望と名前が挙がるワクチンは、まだ治験の最中です。どこのワクチンをどうやって? 新型コロナの抗体の持続期間等、不明な点も多く、必要な接種回数や頻度もはっきり定まらない中、「国民全員分」って一体どれくらい? まだ開発中なのに、安全性・有効性の確認・認可・量産・流通の期限を確約できるの?等、疑問は尽きませんでした。ほら、見たことか、等と言うつもりはありませんが・・。
繰り返しで恐縮ですが、そもそも、ワクチンや医薬品の開発は、様々な困難な課題を乗り越えなければなりません。だからたとえ新型コロナを収束させたい、という思いからであっても、政治やメディア等における過度な期待や前のめりの姿勢は望ましくないですし、そもそも「ワクチンさえできれば、新型コロナの問題がすべて解決する!」という誤解を与えすぎだと思います。
まずワクチンは、科学的に安全性と有効性が確認されることが必須です。(残念ながら、どのワクチンも一定の割合で、避けがたい副反応は生じてしまうことはあるわけですが)、全体として考えたときに、生命と健康を守るワクチン接種が、むしろ害の方が大きいという事ではいけません。だからこそ、年月と費用をかけ、様々な段階を踏み注意深く治験を行います。短期間ではできません。
さらに、開発に成功しても、量産され広く行き渡るには時間がかかります。先進国だけでなく途上国にも供給されないと、世界全体の収束は望めません。
またワクチンは、接種したすべての方について、必ず感染を防げるというものでもありません。過去には、広く流通してみたら、効く割合が治験より圧倒的に少ない、あるいは想定外の副反応が出たといったケースもあります。
すべての疾病について、必ず有効なワクチンが開発できるわけでもありません。例えば30年以上を費やしても、HIVワクチンは未だ開発されていません。
ちょうど昨日、欧米製薬9社が、安全を最優先とし、拙速なワクチン使用を懸念、政治的な動きをけん制しましたが、極めて真っ当、かつ今の世界の誤りを象徴していると思います。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63606340Y0A900C2000000/
ただし、短期間の発熱や注射部位の痛みなど、いずれも予想を超えない軽症から中等症の報告であり、入院を要するような重大な副作用報告はこれまでありませんでした。
今回の事例を明確に区別しておかなければならないのは、入院を要するような「重篤な副作用」が疑われるイベントがあり、治験の中断を要しています。第三相試験では、被験者が数百人単位から数万人単位にまで一気に増加するため、このように新たな事例が明らかになる場合があります。
該当するワクチンは、チンパンジーに感染するアデノウイルスを用いたワクチンであり、ウイルス関連の事象であれば厄介ですが、同技術を用いていないワクチンが他社に多数あり、回避が可能です。一方で、コロナウイルスのタンパク質に関連した重篤な反応ということであれば、多くのワクチンに共通した問題ということになります。
また、副作用が疑われたという状況でも、被験者個人の問題という可能性も含まれ、続報を待つ必要があります。
ニューヨークタイムズは匿名の方からの取材で横断性脊髄炎の可能性を報じていますが、診断のタイミングやワクチンが引き起こした症状なのかは全く分かっていないとも付け加えています。この情報の真偽は不明ですので、公式の情報開示が待たれます。
このワクチンは、アデノウイルスに新型コロナウイルスが細胞への侵入に使うスパイクタンパク質の設計情報を運ばせて、私たちの細胞にタンパク質を作らせる方法が取られています。アデノウイルス自体はもともとチンパンジーで風邪を引き起こすものが使用されていて、細胞内での増殖が不可能な弱毒株が使用されています。
https://www.nytimes.com/2020/09/08/world/covid-19-coronavirus.html?smtyp=cur&smid=tw-nytimes
性急なワクチン開発はリスクが高いともいえ、中止すべき場合は中止するシステムがあるともいえます。
https://newspicks.com/news/5211658?invoker=np_urlshare_uid1506052&utm_source=newspicks&utm_medium=urlshare&utm_campaign=np_urlshare
一方、専門家の間ではADE(抗体依存性感染増強)を懸念する声が根強くあります。ワクチンの実用化を急ぐあまり、逆に「重症化」するケースの研究が尽くされないことへの危機感です。
デング熱のワクチン開発では実用化に至らなかったことを長崎大のモイ・メンリン教授が、先週の『報道特集』のインタビューで指摘していました。治験による幅広い分析が求められます。
実験生物学で学位を修めた身として痛感するのは、自然現象には揺らぎがあること、及ぶ人智は限定的なことであり、ただ謙虚であるに如かずということです。PCR検査や抗原検査が陰性証明になり得ないことも然り。
急ピッチで進められている新型コロナワクチン開発ですが、副作用で臨床試験が中断しているようです。
副作用の内容は不明ですが、全世界で多くの方が接種するであろうワクチンですので慎重な対応を願っています。
特に日本はワクチンの副作用にかなり神経質ですので、ここはしっかり検証したうえで臨床試験を進めて頂きたいと考えています。