プロダクトの評価と、それを開発する会社の評価は直結するわけではありません。プロダクトが評価されていても投資がされづらい場合、どういった点に原因があるのか、投資家サイドから見た投資判断基準の全体像について考えます。

「プロダクトの評価」と「会社としての評価」は直結しないPhoto: Adobe Stock

プロダクトを見る目、会社を見る目の違い

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):今回は、「サービスは非常にいいんだけれども、投資はされづらい会社」について、投資家側の視点から考えてみたいと思います。国内外、上場・未上場問わず、投資家も一ユーザーとして、さまざまな企業のサービスを日々使っています。

中には愛用しているサービスやプロダクトもあるわけですが、投資家が愛用しているからといって、即座に「これいいね」と投資するかというと、必ずしもそうではない。

経営者側からすると、「こんなにプロダクトを『良い』と言っているのに、どうして投資してもらえないんだ」と不思議に思う節もあるかもしれません。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):経営者と投資家の感覚にズレが生じるポイントですよね。特に初期のフェーズにある会社の場合、往々にして起業家はプロダクト開発に専念しているものです。

そんな渾身のプロダクトを投資家が愛用しているのに、投資はしてもらえないとなると、起業家としては「え? プロダクトはいいのになぜ?」という反応になるのも無理はありません。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):そうですね。創業初期であれば、おそらく経営者と投資家の感覚のギャップは小さいはずです。単純に、サービスが良ければ事業が成長する蓋然性は高いので、リスク許容度の高いエンジェル投資家やシード投資家は投資します。

ただ、フェーズが進むにつれて、こうした「プロダクトが良い=投資してもらえる」といった成功体験が再現されづらくなります。

小林:プロダクトは良いのに投資できない、という場合、懸念材料としてはどういった要素が考えられるでしょうか?

朝倉:当たり前の話ですが、プロダクトの評価と、そのプロダクトを提供している会社の評価は違うということですね。ユーザーとしてプロダクトを評価する目線と、投資家として、投資対象の「商品」である会社を評価する目線では、評価する際のポイントが大きく異なります。

村上:投資家は多面的に会社の価値を評価します。サーピス・プロダクトは会社の複数ある価値のうちの一側面にすぎません。サービスにお金を払うのと、会社に投資するのでは、意味が全く違います。

朝倉:例えば今であれば、新型コロナウイルスの感染拡大以降、ZOOMが一気に普及し、利用者数が急激に伸びています。実際に、ZOOMを利用していて、サービスとして「ZOOMっていいな」と思う方もたくさんいることでしょう。

では、サービスがいいからといって即座にZOOMの株を買うか、というと、それとこれとは別の話。あまりにも株価が高騰しすぎていて投資対象として魅力に欠けると思えば、投資はしませんよね。

サービスが魅力的かどうか、と、投資条件として魅力的かどうか、は全くの別問題です。上場企業を例に取るとわかりやすい話ですが、同様のことは、当然未上場のスタートアップでも起こり得ます。