【塩野誠】ハイブリッド戦争とサイバー攻撃#2/6
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ここではデジタルテクノロジーの負の側面をえぐる。平時でも有事でもない「グレーゾーン」における主役はサイバー攻撃である。サイバー攻撃の低コスト性、犯人隠避の容易性、与えるダメージの重大性は、貧者の武器としては最適である。特に犯人が特定しづらく表立って人を殺傷したり、施設を破壊することが少ないため、攻撃側は実行に躊躇がなくなる。
サイバー攻撃に対して武力による対抗措置の是非、サイバー空間の主権の存否など通常兵器を前提にした戦争倫理に対する新たな論争や安全保障上の論点を解説している。
一般市民の我々もデジタル化やネットワーク化による利便性には、光と影のようについて回るサイバー脅威があることを思い知らされる。果たして、デジタル化に身をゆだねることに一度我々は立ち止まる必要はないのか考えさせられる。
注目のコメント
「ハイブリッド戦」とは、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法で、相手国に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いる作戦行動だ。例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いる。
この手法は、2014年のロシアによるクリミア併合時、ウクライナに対して行われ、世界中の安全保障関係者を驚愕させた。サイバー攻撃により作戦開始以前から情報を盗み出し、作戦が始まるとサイバー攻撃はマルウェアを送り込むだけではなく、サプライチェーンなどにも攻撃した。同時に部隊を侵攻させ物理的に通信ケーブルを破壊しIXP(相互接続点)を占拠した。
このハイブリッド戦は、純然たる平時でも有事でもない、いわゆる「グレーゾーン事態」といわれる状況で行われる。そう、今現時点でも日本に対して行われている可能性があるのだ。本章では、特にサイバー攻撃にフォーカスしその実例が紹介されている。見えないものを正しく知覚し、正しく恐れ、備えること。
これはコロナ時代を生きる私たちに求められるリテラシーです。
しかし、コロナ以上の見えないリアルな脅威があるとすれば、それはこの章で語られる「サイバー攻撃」でしょう。
ライフラインに影響を与えられるサイバー攻撃を受けた時、政府はどう対応すべきなのか?そして、私たちは何ができるのか?
私たちは一歩ずつサイバー空間へと移動しているのに、これらの問いに関して無防備すぎることに気づきます。
社会的にリテラシーを高めるために、何をすべきなのか。スウェーデン政府のような極端ともいえる姿勢を理解しながら、日本なりのアプローチを探るタイミングに来ていることを認識しました。商業から政治的・軍事的な視点に移行し、サイバー攻撃や人権について検討される。これを読んでいると、容易にデジタルIDや行政プロセスのデジタル化を行ってよいのかという懸念さえ芽生えてくるが、どの時代でも脅威は存在する。可能ではないかという論もあるため、悩ましい。
要素の多さに身動きが取れなくなりそうになるが、見えていなかった視点を獲得できることを前向きに受け止め、あきらめてはいけないと強く思わされる章。