2020/10/4

【公文 社長】世界400万人が学ぶ「公文式」はこうして生まれた

宮本 恵理子
フリーランスエディター・ライター(Editor,Journalist)
「やっててよかった公文式」のキャッチコピーで知られる教室を展開する公文教育研究会。たった一人の高校教師の指導法から生まれたメソッドは、今や50を超える国と地域に広まり、日本発の強力なソフトコンテンツになっている。

2015年に同社初のプロパー出身社長として就任した池上秀徳氏は、創始者・公文公氏から直接薫陶を受けた経験を自身の経営哲学に昇華させたという。

今に至る原体験、創業の精神を受け継ぐトップとしてのあり方、グローバル企業が目指す「KUMON」の未来について聞いた。(全7回)
池上秀徳(いけがみ・ひでのり)/公文教育研究会 社長
1956年千葉県生まれ。1980年東京大学文学部卒業後、公文数学研究センター(現・公文教育研究会)に入社。公文式教材の制作および指導法開発に長年携わり、2003年に教材開発部長となる。2004年取締役教材開発部・教材管理室担当に就任。以降、教材・指導関連の取締役を歴任し、2014年に常務、2015年に社長就任。

「やればできる」を育む

392万人。
公文式を学んでいる人々の数です。舞台は世界。現在、公文式のフィールドは50を超える国と地域に広がっています。
解き方を教わるのではなく、自分の力で問題を解き、一人ひとりの力に合わせて「やればできる」の自己肯定感を育んでいく。
そんな日本発の学習法、「KUMON」が生まれたのは、今から66年前のこと。1954年、高校の数学教師だった公文公(くもん・とおる)が、小学2年生の息子・毅(たけし)のために計算問題を作成したのが始まりでした。
公文教育研究会の創始者・公文 公氏
きっかけは、学校から持ち帰った算数テストの点数があまり芳しくなかったことだったそうです。
常識に縛られない合理的思考の持ち主だった公文公は、「教師の板書を写し書くだけの学習では、力はつかない。自ら進んで問題を解く喜びを体験できる教材を与えたい」と、計算力の養成に主眼を置いた自習教材として、独自の順番で計算問題を配列して4つ穴のルーズリーフに書いては、わが子に渡していきました。
目標は「小学生のうちに高校卒業程度の計算力を身につけること」。
学年ごとの学習目標を達成すれば十分とは考えず、子どもの力に応じて可能性を伸ばしていくことが大切だと公文公は考えていたのです。
公文公氏が息子のために手づくりした原典教材