広がる「DX格差」。結果を出すための「ユーザー×コンサルの理想的関係」

2020/9/11
アクセンチュアが強みにする3つの掛け合わせデジタルトランスフォーメーション(DX)が企業にとって至上命題と言われる中、コンサルティングファームにサポートを依頼するケースも増えているという。テクノロジーを生かしたコンサルティングを得意とするアクセンチュアは、DXをどう捉えているのか。

同社の中で、業種・業界を問わず、テクノロジーを起点としたお客様の抜本的な経営・事業トランスフォーメーションを手がける「テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ」で日本統括を務める村上隆文マネジング・ディレクターに話を聞いた。

これから「DX格差」が出てくる

──どの企業も「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が重要テーマで、アクセンチュアに寄せられる相談、問い合わせも増えていると思います。村上さんは、このブーム化したDXをどう見ていますか。
村上 デジタルテクノロジーを活用しなければ既存ビジネスの強化も、新しいビジネスの創出も困難ですから、デジタルをもっと活用しようという機運の高まりは当然ですし、各企業のトップのDXに対する強い意気込みを感じます。
 ただ、多くの企業は依然として試行錯誤の段階と感じています。例えば新しいモバイルアプリを使って本業から離れた領域で新サービスを立ち上げたり、既存業務に対して部分的にRPAや簡単なAI技術を適用したり。
 本業そのものを含めて根本的な変革に到達し、大きなビジネス成果を出せている企業は比較的限定されているとみています。
 弊社のグローバル調査を見ても、同じようにDXを標榜しつつも、ビジネス部門とIT部門の関係再構築、全社的なシステム基盤の見直し、カルチャー変革まで踏み込んだ企業と、表面的な対応にとどまった企業で、実に収益成長率で2倍の差が出る「DX格差」が生じていることが分かっています。
 日本においても、こうしたテクノロジー部門全体の変革への踏み込みにより、DXによるビジネス成果の刈り取りの差が出てくるのはこれからと考えています。

「多様な人材+グローバル50万人のナレッジ+ベンダーフリー」

──デジタル人材不足の企業は、外部の企業にサポートを求めるでしょう。そういう状況だけに、ITベンダーや戦略コンサルティングファームは挙って「DX支援」をビジネスのキーワードにしている状況です。
 そうですね。まさに「どこもかしこも」ですよね。その中で、アクセンチュアの強みとしてまず言えるのは、コンサルティングサービスにとどまらず、実装・実行まで「一人称」で支援できる基盤が整っていることです。どんなに秀逸な戦略やプランを立てても、それを実装できないと意味がありませんよね。
 アクセンチュアは日本オフィスだけで1万5000人以上いますが、戦略コンサルタントだけではなく、業務・システムコンサルタントやエンジニア、UXデザイナーなど、多様な人材を抱えています。この規模で、戦略から実行までワンストップで手がけられる体制を敷いている企業は、私が知る限り他にありません。
 こうした経験も活用しながら、試行段階のみならず、圧倒的なスピードでDXを本格展開・スケールできることもアクセンチュアの強みです。
 2点目として、50万人以上の社員が全世界で日々お客様に向き合って蓄積してきたナレッジを生かせること。
 アクセンチュアには、全世界のメンバーが手がけてきたプロジェクトでの経験が蓄積されています。ディスラプションが進行し“正解”が分かりにくい世の中でも、こうした膨大な実体験に基づく知見を生かしながら、 “正解”を解像度高く提言し、かつ実効性を担保できるのは他社には簡単にはできないと思います。
 3点目として、ベンダーフリーであることが強みとして挙げられます。アクセンチュアは自社製品を持たない会社ですので、決まったハードウェアやソフトウェアを売らなければならない「縛り」がありません。
 常にお客様の課題と真摯に向き合って、しがらみなく抜本的イノベーションや現状踏襲でない変革の提案ができることもお客様にとってのベネフィットだと思います。
──コンペになったとしても負ける気がしない、と?
 そうとは言い切れませんが、自信は秘めています。究極を言えば、コンペになってしまうようではダメだな、と。他社と比べることなく「このプロジェクトならアクセンチュアと組む以外に選択肢はない」とイメージしてもらえる存在になりたいと思っています。
──そうした強みを生かした事例を教えてください。
 グローバル展開する製造業で、各地域・国で独自に運営してきたデジタル部門、IT部門や、基幹システムをグローバル横断で最適化し、デジタル社会の中での成長を実現・支えるIT部門・インフラを構想したプロジェクトが好例かもしれません。
 東京にメインのメンバーがいながらも、世界各国にもサブチームを組成し、連携をとりながら完遂させました。
 グローバル体制があったからこそ、ここまで広範なプロジェクトを手がけられることができたと思います。
 また、このプロジェクトを始めるにあたってドイツ出身のシンガポールオフィスのメンバーを巻き込んだ結果、過去に同様の変革を遂行したプロジェクトの整理方法を持ち込んでもらい、議論を重ねることで先進的かつお客様の課題に沿った提言ができました。そうした知見を有効活用できたことも、成功の要因だと感じています。
出典:DKosig/iStock

多様な業種・業界を担当する個性派集団

──その中で、村上さんがリードする「テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ」とはどんな役割を果たしているのか、教えてください。
 この部門では、業種・業界を問わず、お客様のCEO/CxOをはじめとする経営層に向けて、テクノロジーを起点としたお客様の抜本的な経営・事業トランスフォーメーションを手がけています。
 従来のテクノロジーは、戦略や業務が確定したもの、円滑・効率的に運営する手段として用いられていましたが、アクセンチュアでは、「テクノロジーがあるからこそ策定できるビジネスや戦略がある」と考えています。
 プロジェクトを推進するにあたって、他グループのメンバーとコラボレーションすることもあります。
 例えば、私の所属するビジネス コンサルティング本部には、特定の業界や機能に特化したコンサルタントがいますので、彼らの知見と、私たちが持っているテクノロジー領域の知見を掛け合わせることにより、よりインパクトのあるサービスが提供できるのです。
 また、実行フェーズでは、システム導入や開発・運用を担当する部門とも連携しながら、私たちはハブとなりプロジェクトを進めています。
──どんなメンバーが所属しているのでしょうか。
 多種多様ですね。戦略やIT領域のコンサルティングファーム出身のメンバーもいれば、ITサービス企業、そして事業会社でデジタル/IT企画に携わっていた人もいます。
 事業会社のIT部門の方々は、これまで既存システムの安定運用やコスト削減など、比較的保守的な仕事が多かったように思いますが、最近のDXの流れを受けて、戦略的にビジネスにテクノロジーを活用しようという「攻め」の意識が高まっている印象があります。
 テクノロジーをどうやってビジネスに生かすか考え、実行している方々には、是非アクセンチュアに来てほしいですね。

「脱コモディティ」なITコンサルを

──さまざまなキャリアを持つ人がいる中で、メンバー全員が持つ軸や共通点は何ですか。
「変化を促す情熱があり、能動的に行動ができる」点はメンバーに共通しています。
 今のような混沌とした先行き不透明な状況下、「変わらなければならない」という意識をお客様は持っています。その中でコンサルタントとして重要なのは、斬新な戦略やお客様を説得するためのロジックだけでなく、お客様の背中を押す情熱です。
 青臭い話かもしれませんが、最も重要なのは変革、DXをやり抜こうとする気持ちです。ですので、私たちのチームにはコンサルタント経験がなかった人も活躍していますし、採用にあたってコンサルタント経験の有無のみでは判断をしていません。
 上記に加えて、「テクノロジー産業を変えたい」という気持ちを持っている人が望ましいと思っています。
──「テクノロジー産業を変えていく」というのは?
 私は約20年、テクノロジーを活用した変革をお手伝いする立場に身を置いていますが、この20年は、ITコンサルもシステム開発もコモディティ化した状況だと思います。
 専門的な話をすれば、IT産業はこれまで、各業種に合わせた業務パッケージシステムが登場したことで、それをインプリメンテーションすることがコンサルやシステム開発会社の主なミッションでした。比較的良いシステムを安く、確実に導入できるようになったという点で非常に意味があったと思います。
 ただ、そうなったことで、ITサービス企業やコンサルティングファームが斬新な提案をする機会が減少し、新たな価値を生みたいと願うお客様も、自社に適したテクノロジーをリスクを取りながらも果敢に導入してビジネスに貢献する余地が少なくなった。
 お客様は今、DXに積極的に取り組み変わろうとしています。ITサービス企業やコンサルティングファームも、コモディティ化した提案から脱却し、お客様にとって新しい価値を提供する時期に入ったと思います。
 そのため、アクセンチュアのビジネス拡大、価値の向上はもちろんですが、テクノロジー産業自体を進化させるような仕事を仲間とともにしたいと、私は思っています。
(編集:木村剛士 デザイン:田中貴美恵)