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ロスアトム社、シベリア化学コンビナートでレミックス燃料集合体の製造へ 

27 Aug 2020

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は8月26日、トムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(SCC)で、100万kW級のロシア型PWR「VVER-1000」に装荷するレミックス(REMIX)燃料集合体の製造ラインを2023年に完成させる計画を明らかにした。

レミックス燃料(=写真)は、使用済燃料からウランとプルトニウムの混合物を分離せずに回収し、最大17%の濃縮ウランを加えて製造する軽水炉用の原子燃料。ロスアトム社によると、同燃料は高速炉用のウラン・プルトニウムの混合窒化物(MNUP)燃料や混合酸化物(MOX)燃料と異なり、プルトニウムの含有量が最大で1.5%と小さい。

一方、中性子スペクトルが一般的な軽水炉燃料とあまり変わらず、燃料集合体の炉内挙動が似ていることから、軽水炉への導入にあたって設計変更や追加の安全対策が不要である。このため同燃料は、軽水炉でのプルトニウム・リサイクルにより、使用済燃料の貯蔵量削減やウラン燃料の節約に寄与すると期待されている。

ロスアトム社はこれを、ロシア国内で稼働する主力設計炉「VVER-1000」の全炉心に装荷することを検討している。今回、同社の投資委員会がSCCで試験用燃料製造の現場を近代化するプロジェクトを承認したことから、レミックス燃料棒が組み込まれた「TVS-2M」モデルの燃料バンドルとVVER-1000用燃料棒を組み合わせる新しい燃料集合体製造ラインの設置が可能になったもの。

同ラインが設置されるSCCはロスアトム社の燃料製造部門であるTVEL社の子会社で、プルトニウム取扱専門技術をもつ中心的機関。MNUP燃料の試験集合体をベロヤルスク原子力発電所の3号機(60万kW級FBRの「BN-600」)用に製造しているが、レミックス燃料の製造ではクラスノヤルスク州ゼレズノゴルスクにある鉱山化学コンビナート(MCC)が燃料ペレットの生産等で協力する。

ロスアトム社は2016年以降、6本のレミックス燃料棒を含む「TVS-2M」燃料集合体を3体、バラコボ原子力発電所3号機に装荷して、パイロット運転プログラムを実行中。今年は同炉で3回目の18か月サイクル運転が始まっているが、少量の試験用レミックス燃料棒による2サイクルの運転が成功裏に完了したことから、同社は次のステップとして、レミックス燃料集合体を原子炉にフル装荷することを検討している。

こうしたことからSCCの燃料集合体製造ラインは、パイロット運転プログラムの燃料バンドル(束)に必要な量の製造規模になる模様。今のところ同燃料技術は試験の第一段階にあるが、ロスアトム社はパイロット運転の結果次第では、将来的にレミックス燃料を連続生産する産業規模の施設建設も可能になるとしている。

(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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