[ワシントン 28日 ロイター] - 米商務省が28日発表した7月の個人消費支出(季節調整済み)は前月比1.9%増と、市場予想の1.5%増を上回った。第3・四半期に経済が大きく持ち直すとの見方を後押しした。ただ、新型コロナウイルスの影響が長引き政府の金融支援が枯渇する中で、回復の勢いは鈍化する可能性が高い。

MUFG(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「7月は各種店舗やショッピングモールで消費が復活したものの、これは抑え込まれていた需要(ペントアップデマンド)を反映したものにすぎない」と指摘。週600ドルの特別失業給付が7月末で失効したことを踏まえると「景気回復に必要な消費が8月も継続したかどうかは疑問だ」と述べた。

個人所得は0.4%増加し、3カ月ぶりにプラスに持ち直した。物価上昇圧力は前月に続き上昇した。米連邦準備理事会(FRB)は27日、労働市場の強化に重点を置き、物価が上がり過ぎることを過度に心配しない新戦略を打ち出した。

個人消費支出は6月に6.2%増加していた。個人消費は米経済の3分の2以上を占める。

7月は新車などのモノの消費が増え、モノの消費支出は新型コロナ流行前の水準を超えた。ヘルスケアや外食、宿泊の支出も増加。ただ、消費者がまだ新型コロナの感染を警戒する中、サービスの支出は2月の水準を依然下回っている。

これはサービス業が柱である米経済にとって悪い前兆と言える。米経済は2月に景気後退(リセッション)入りした。新型コロナの感染者数は、夏に広範囲にわたり再び増加した後に落ち着いてきたが、対面形式の授業を再開した大学など感染者の多発地域はまだ多く残る。

米経済は第2・四半期に少なくとも73年ぶりの大幅な落ち込みを記録した。個人消費がGDPの主な押し下げ要因だった。

エコノミストは個人消費がけん引する形で第3・四半期にGDPが大幅に持ち直すとみているが、第4・四半期GDP見通しを下方修正している。

この日発表された7月の小売在庫は持ち直し、第3・四半期のGDP見通しを下支えた。輸入の増加によるGDPの重しを相殺する可能性がある。輸入増加で7月はモノの貿易赤字が拡大した。

今回の景気低迷では低賃金の労働者が最大の打撃を受けた。失業手当を週600ドル上乗せする措置は7月31日に失効。トランプ米大統領は措置を延長したが、上乗せ額を週300ドルへ削減したほか、政府の支援金は9月までに枯渇する見通しだ。

失業保険手当を増額している州もある。エコノミストは週600ドル追加する措置が終わったことで8月の小売売上高が500億ドル減ると試算。失業手当を受ける人は最低2700万人に上っている。

個人所得は0.4%増。事業が再開する中で賃金が増え、政府の支援金が減ったことを相殺した。6月は1.0%減少していた。賃金は7月に1.3%増。6月は2.2%増加していた。

消費対象がモノに偏り、物価がさらに上昇した。個人消費支出(PCE)価格指数は0.3%上昇。6月は0.5%上昇していた。7月の前年同月比は1.0%上昇。6月は0.9%上昇していた。

変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、2カ月連続で前月比0.3%上昇した。7月の前年同月比は1.3%上昇。6月は1.1%上昇していた。FRBはPCEのコア指数を物価の目安としている。前日の政策変更を受け、FRBの物価目標は平均2%になった。

貯蓄率は17.8%と、前月の19.2%から低下。4月に33.5%と過去最高を記録して以降、下げが続いているものの、コロナ感染が収束しない中で、消費者が今後も貯蓄を取り崩してまで積極的に消費するとは考えにくいという。

オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)の米国担当シニアエコノミスト、リディア・ブスール氏は「貯蓄率の低下ペースが急激に鈍化したことは重要。第3・四半期の機械的な持ち直しは別として、一段とタイムリーな指標からは需要の勢いがやや落ちていることが認められる」と指摘した。