テクノロジーは都市に何をもたらすか

2020-08-25

ロボットやドローン、空飛ぶクルマの活用

都市におけるスマートシティ化やデジタル化の推進ツールとして、ロボットやドローンの活用が世界で進んでいます。点検や保守、警備、物流など、さまざまなユースケースでの取り組みが各所で紹介されています。

ドローンは日本において、操縦者が目視できる範囲かつ第三者が不在のエリアでしか飛行ができないという規制が存在していますが、2022年を目途にこうした規制の緩和が見込まれているため、ドローンの活用が急速に進むことが予見されます。

さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会環境変化により、非接触でより安全なサービスの提供、安全な職場環境、必需品の安全かつ安定的な供給に対する要求が高まっているほか、リモート環境での生活の整備が進むなど、人々の価値観やニーズに変化が見られます。

例えば医療分野では、遠隔医療が解禁され、薬剤師の対面指導を受けなければならない処方箋の受け取りについて、オンラインでの服用指導が認められる方針となりました。また、非対面での荷物・商品受け取りサービスである「置き配」が標準になっている業者(宅配業者、フードデリバリー)も増加しており、非対面サービス市場は今後も成長が期待されます。

海外の状況に目を向けると、中国では配送用ロボットの規制緩和など、国をあげてロボット・ドローン普及を推進しており、商用活用が急速に伸びています。非接触の配送需要が急増する中で、配送ロボットを開発するスタートアップ企業には注文が殺到しており、路面の消毒や食料品や医薬品の配達などでもロボット・ドローンの活用が進んでいます。

アイルランドではスタートアップ企業が航空局から許可を受け、個人宅への医薬品配送を開始しており、今後は食品の配送も許可される予定です。

カザフスタンでは警察がドローンサービス事業者に首都のパトロールを依頼し、感染拡大防止のために封鎖されたエリアで複数の迂回路や不正行為を発見することに成功するなど、緊急時に広範な巡視が可能であることを実証しています。

今後はさらなる進化として、空飛ぶクルマ(UAM:Urban Air Mobility)の普及に向けた開発が各国で進められています。中国の企業ではすでに人を乗せた実証実験を世界各地で実施しており、リゾートホテルでの運用なども計画されています。技術的な進展に加え、安全に運航するために必要な法整備、ポートなどのインフラ、ビジネスモデルの確立が進めば、新たな都市の移動手段の一部を現実的に担うことになるでしょう。特に移動における課題が多い地方都市での期待値が高くなっています。

MaaSのビジネスモデルの進化

次世代の移動手段としてMaaSの普及に向けた取り組みも各地で進められていますが、ここでも新たなテクノロジーの活用による価値増大が見込まれます。MaaSは社会的な課題の解決に有効な手段の一つとして考えられているものの、マネタイズが困難でビジネスモデルが成立しにくいことが大きな課題であり、世界を見ても公共サービスの一部として提供されるケースが多くなっています。一方で、コンピューターの演算処理能力の高速化や、統計解析・機械学習などのAI(人工知能)関連技術の普及を背景に、技術活用を収益化につなげる取り組みも始まっており、PwCもその支援を担っています。サービス価格を需給の状況に応じて変動させるダイナミックプライシングをはじめ、あらゆる環境変化や制約条件のもとでの事業収益を日々シミュレーションし最大化する最適化モデルの構築などが進んでおり、今後のMaaSの普及を促進する見込みです。

都市のデジタルツイン化

都市を構成する全ての要素をデジタル空間上に再現して、交通状況や災害など想定しうるあらゆる状況をシミュレーションし、状況の変化やリスクに対応する策を即時に打つための取り組みも行われていいます。こうした都市のデジタルツイン化は各国で行われていますが、例えばフィンランドのヘルシンキではデジタル化によって世界で最も機能的な都市になることをスローガンに掲げ、都市全体をデジタル化し、革新的なサービスやプロダクトを生み出すためのインフラとして機能させることを目指しています。都市全体を3次元モデル化し、水害や日照時間のシミュレーションに基づいて災害対策の検討や太陽光パネルの効率的な設置を行うほか、ビル建設時の日照や風速、風向のシミュレーション、人やモビリティの移動データのシミュレーションなど、さまざまなユースケースでの活用が見込まれており、非常に注目度が高い取り組みです。

このように個々のテクノロジーとしては以前から存在するものの延長であったり、まだ解決すべき課題の多いものであったりはしますが、その技術の進化や複数の技術の組み合わせ、社会的な価値観やニーズの変化により、スマートシティに新たな価値を提供する仕組みとして機能していく例が増えています。日々テクノロジーの動向を掴み、適切に活用することが重要です。

※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。

執筆者

岩花 修平

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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