【佐渡島庸平×中山淳雄】ソーシャルゲームの可能性と問題点

2020/9/8
NewsPicks NewSchoolでは、10月から「ビジネスストーリーメイキング」プロジェクトを始動する。プロジェクトリーダーを務めるコルク佐渡島庸平氏が、『オタク経済圏創世記』著書のブシロード執行役員中山淳雄氏とともに、コンテンツビジネスの未来像を論する(全5回)。
NewsPicksとネットフリックスの課題
佐渡島 僕たちは双方向のコンテンツは何なのかということに関して、知らなさすぎる気がします。
やっぱり読書という行為は自分が参加している感じに乏しいので、タップの回数を多く入れることによって、「参加している感」をどうやってつくるかだと思いますね。
いまはありとあらゆるタイプのゲームがあって、ずーっとボタンを押しながらストーリーを読むようなゲームも存在するから、限りなくゲーム的になっていくんじゃないかなという気がしますね。
佐渡島 庸平/株式会社コルク 代表取締役
中山 でもインタラクティブ性がないほうが、遮断されずに集中できていいという面はないですか。
佐渡島 遮断されるかもしれないけど、授業だってディスカッションする授業のほうが「自分ごと」になるでしょう。
中山 頭にも入ってくる。
佐渡島 そう。この前僕が主宰するコミュニティの「コルクラボ」のメンバーが言っていたのが、「1人で読んだ本はすぐ忘れるけど、読書会で読んだ本は一生忘れない」。
──1人でがっつり読み込むのは、マスのニーズじゃないんですね。
中山 自分1人で没頭できる人は、受験勉強を楽しんでできるような少数派ですね。
佐渡島 NewsPicksもニュースにインタラクティブ性を加えたものでしょう。それまでは新聞記事の見出しの大きさや、テレビの伝える順番などで価値づけされたニュースを受け取っていた。
でもNewsPicksではピックすることによって、ニュースの価値を自分で決められるわけですよ。
中山 アップデートカルチャーというやつですよね。ニュースのゲーム化ですね。
中山 淳雄/株式会社ブシロード 執行役員
佐渡島 そう、だからピックと同じような、今まで誰もコンテンツだと思わなかったものをコンテンツ化する仕組みを開発し続けることが、本当のNewsPicksをアップデートし続ける行為だと思いますよ。
──普通のメディアと同じ勝負をしてもしょうがないですからね。それにネットフリックスみたいにコンテンツにお金をジャブジャブつぎ込んでも、結局資金がもたない。本質的には、ネットフリックスもそれほど新しいモデルではありませんよね。
佐渡島 ネットフリックスはハリウッド映画のデジタル化であるというだけで、何も変わっていない。僕はメディアが変わればふさわしいコンテンツも変わると思います。
コンテンツの幼稚性
佐渡島 一時期、ユーチューバーが幼稚だって言われてたでしょう。僕、最近そのことについて考えてたんです。
おそらくメディアが新しくなると、みんなそのメディアの使い方がわからないから、自然と1回幼稚化が起きるんだと思います。
中山 初期のテレビなんか、その最たるものですよね。映画界から見たらバカにされるようなクオリティーだった。
佐渡島 だからTikTokも、みんなまだTikTokをどう使えばいいかわからないから、幼稚なコンテンツが集まる。
とにかく新しいメディアが現れるたびに、そのメディアでは1回幼稚化したものが拡散される。その後に本格的に流行っていくんだと思いますよ。
Anatoliy Sizov/iStock
ということは、今、幼稚なものが流行っているメディアというのは、これから成熟していく可能性が高いから注目しないといけないんじゃないか。それに幼稚化したものは言語を超えて、全世界に行けるんですよ。
中山 文化や風習が違う人にも理解できる、ローコンテクストですね。
佐渡島 そう、ローコンテクストだから。逆にいえば、成熟化したものは全世界に行けない。
日本のマンガ文化は成熟しすぎているから、僕らには韓国の縦読みするデジタルコミックの「ウェブトゥーン」をはじめ、韓国や中国の漫画が幼稚に見える。
でも今これが全世界で読まれているんです。これはすごく重要なことじゃないかなあ。
基本的に漫画って、1ページあたり5~7コマぐらいで物語が進むんです。
でもウェブ上だと読みやすいように1ページあたり3~5コマぐらいにしている。
そういう印象もあって、ウェブ漫画は幼稚だと言われるんだけど、1970年代とか80年代の漫画って、やっぱり1ページのコマの量が3コマから5コマなんですよ。
それで今ウェブ上には情報が多くて、ストーリーを忘れてしまうから、展開をシンプルにしたり刺激を強くしたりする。
でも漫画雑誌が1週間に1度発売されるだけだった1970年代、80年代の漫画だって、ストーリーがシンプルで、チープで、ヒキが強かった。
中山 変なギャグみたいなものも多かったですもんね。
佐渡島 そうなんですよ。いまのウェブ漫画も、思いっきりヒキを強くしておいて、うまい続きが思いつかなかったら、なかったことにする、みたいな適当さがありますよ。
中山 きっとこれからユーザーのリテラシーが上がってくるんですね。
──しかもクリエイターが職人的であればあるほど、ユーザーにとって面白いものをつくるより、同業者に評価されたいという思いが強くなってしまう。その結果、マニアック化していきますね。そういえば新日のプロレスって、あれだけニューヨークでウケるということは、やっぱりわかりやすいローコンテクストなんですか。
中山 そうですね。ただWWEは完全にローコンテクストというより、すでに地盤があるコンテクストですね。
やはり新日もいきなり東欧やアフリカで流行るかというと、流行らないんですよね。
かといってタイはすでにキックボクシングがあるので、プロレスが見られるかというと見られない。やはり皆が想起するものがあって、「あれと違う」と思われてしまう。
「BanG Dream!(バンドリ!)」のすごさ
──ほかに中山さんの本のなかで、佐渡島さんが注目した箇所を読み上げてください。
佐渡島 「BanG Dream!(バンドリ!)」というガールズバンドのメディアミックスについて書いた部分ですね。
「キャラクターの魅力をリアルの場で伝え、コミュニケーションを行うタレント。そのコミュニティを顕在化させる試験メディアとしてのコミュニティイベント、ライブコンサート。ユーザーの生活環境に溶け込み、想起と継続を促すグッズシリーズ、DVDとの商品化。商品力で一気に客寄せを狙い、ライセンス展開を特徴とさせるアニメ。毎日の運営で集められたユーザーからのマネタイズを促すモバイルゲーム。これらのコンセプトで最初から組み込んだことにある」
引用:『オタク経済圏創世記』(中山 淳雄/日経BP社)
中山 「バンドリ!」ってご存じでしたか。バンドを組んで音楽活動をする高校生少女たちの話で、アニメ、コミック、ゲームだけでなく、声優のリアルライブも行っているんです。
佐渡島 いや、しっかり知らなかったし、こんなに売り上げが大きいとは思っていませんでした。
中山 僕も入社したばかりのときにリリースされたのですが、「バンドリ!」がこんなにウケるとは思っていませんでした。
「ラブライブ!」もすごいと言われていますけど、広く一般的に知られているジャンルではない。
たとえば同窓会に行ったときに、40人のクラスメイトのうち、「バンドリ!」を知っているのはかろうじて1人くらいですよ。
でもすでに200万人がプレイしていて、毎日やっている人が100万人ぐらいいるにもかかわらず。
自分がユーザー対象層にいないけれど、じつは10代・20代のユーザーにはものすごく深く刺さっていて、知らない間にものすごい大きな経済圏になっていたりする。
著書のなかでも1500万人のユーザーを持つ「アナと雪の女王」は50億円の経済圏しかないのに、300万人くらいのユーザーなのに400億円以上もの経済圏をつくりあげた「ラブライブ!」の事例なども入れてます。
佐渡島 かつての大量消費社会では、そのコンテクストを共有していない人にもよさが伝わるものがいいコンテンツだとされていたわけですよ。
でもそれぞれの国の魅力的なものって、結局、ガラパゴス化したものでしょう。
だから一部の人にしかわからない、めちゃくちゃ内輪受けのコンテンツでも価値を感じてもらえるものにまでなったら、すごくいいことなんじゃないかな。
たとえば結婚式市場が大きいとき、それを不健全とは言いませんよね。結婚式という一瞬のことに対して皆大金を払うわけだけど、それは大切な人のために使うのは当たり前って皆思うからでしょう。
じゃあ、その大切な人がバーチャルな存在なら不健全なのか。僕は人の幸せって、誰かを好きになることだと思ってるんですよ。愛されるよりも愛することのほうが難しかったりするから。
中山 なにかを好きになっている人は素晴らしいですよね。それだけのものを見つけられたというだけでも。
佐渡島 うん。だから結婚式に200万~300万円使うことに対して、「おまえ、それブライダルマーケットに騙されてるぞ」とは誰も言わないけれど、バーチャルのキャラクターに200万~300万円払うと、「おまえ、ゲーム業界にいいようにやられてるぞ」と言われてしまう。
中山 搾取とか言われますよね。
佐渡島 でもVRとかいろんなものが発達していくと、そういうキャラクターと関係性を結ぶということもありえるでしょうね。
それに、そういうキャラクターを魅力的につくるのはけっこう難しい。
リアルな関係性だって簡単に崩壊してしまうのに、こっちから会いに行って、お金を払わない限り関係性を築き続けることができないバーチャルキャラクターのほうが、関係性を保ち続けるのは難しいですよ。
パチンコ的な射幸心を煽って中毒性で続けさせるようなものは、関係性を築いているとはいえない。だからそう考えるとこの仕組みってすごいなあと思います。
中山 結果的にはバランス次第ですよね。
キャラクターを好きになってもらえば、ユーザーは確かにハッピーなんですね。
作品もお金が儲かれば儲かるほど、よりよいものになるんですけど、逆に最適化ロジックを働かせすぎると儲けることが第一義になってしまったりする。
僕が最初に書いたのが「ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか」(PHP新書)という本です。
一時期、ガチャとか課金制のソーシャルゲームが問題になりましたよね。
あのときはデジタル知財に詳しい慶應大学の中村伊知哉先生が協会をつくったのが善悪の分岐になり、それで大体1兆円で止まったんですね。
だから善悪云々よりは、そういうものがあったのが漫画だしアニメだし、実際2つは文化として残っていて、日本の武器にもなっている。
色々折り合いをつけてバランスの最適解を見つけたのでいまは受け入れられ、産業として確立している。
佐渡島 キャラクターをつくってそれを好きにさせるという行為自体は、僕が物語でやろうとしていることだし、そういうキャラクターって簡単につくれないから、僕は尊い行為だと思う。
DeNAとブシロードの人たち
──そういう意味では「バンドリ!」に携わっているブシロードの人たちと、DeNAに行った人たちとでは、人種が違うんですか?要するにDeNAの人たちって頭がよすぎて、コンサル企業っぽい。あまりクリエイターには見えなくて、 とにかく合理的に収益が上がる道を考えている人たちに見えます。プラットフォーム企業とコンテンツ企業の違いかもしれませんが。
中山 そうですね。実はブシロードはコンテンツをつくる会社というよりは、プロモーション会社なんです。
でも確かにバンダイナムコなどゲーム族と DeNA族とは確かに違う。
DeNA族って、フレームから入るんですね。「いくらの市場があって、外側から固めるとこういうものができる」とか、「最後にプレイするところはコピペでいいから、あのゲームのこれを持ってこよう」とか。
クリエイターは「どうやって遊ばせようか」とか、「このゲームギミック、めっちゃ面白くないですか」みたいに発想してキャラクターをつくっていったりする。
RyanKing999/iStock
でも2010年の前半くらいまで、これが効かなかったんですね。
こんなゲームが面白いかもしれないと考えているあいだに携帯のテクノロジーが進歩していくので、そのゲームが陳腐化してしまう。DeNA型の攻め方のほうが市場にとてもマッチしていた。
今はそれまで年間10本、20本出していた会社が、年間1本、2本になっています。開発費が10倍ぐらいに上がったので。
そういうなかでいうと、いわゆるゲームギミックから出てきているクリエイターのつくるもののほうが面白い時代になった。パズドラとかモンストのように、インゲームがきちんとしていないと流行らなくなった。
「バンドリ!」に関わる人たちもいわゆる映像やキャラクターづくりで、主観的なユーザーの共感をベースに作品をつくっていく人が多い。
佐渡島  そういうことですね。やはり人種が違いますね。
中山 数字やロジックも全然ない。僕がコンサルだったら止めてました。
「過去の歴史を見ると、アイドル系はこういう失敗をしてきました。「「ラブライブ!」は日本でいうとこれくらいの地位だから、ヒットしても月1.5億でしょう」とか。
ところが、現代は過去の作品からの計算だけでは予測できなかったことが起きているんです。
バンダイナムコさんの「ラブライブ!」って2014年ぐらいからアニメエキスポに出ていて、毎年ライブをやっているんです。
今年もアニメエキスポで15万人が来るんですけど、そこでは3000人のアメリカ人が一挙手一投足、日本人と同じように踊るんですよね。「日本のあの憧れの学園生活のあの人たちと同じことができる喜び」が5年間で熟成されていっている。
今回は会場の問題で3000人でしたが、本当は5000人でも埋まるんです。
いまのDeNAは当時とはずいぶん変わってきてますけど、こういうブランディング的な施策はバンダイナムコやブシロードのような会社でないとなかなか展開できなかった。
※明日に続く
(構成:長山清子、撮影:遠藤素子、デザイン:九喜洋介)
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